かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『わたしが先生の「ロリータ」だったころ』

わたしが先生の「ロリータ」だったころ 作者:アリソン・ウッド,服部理佳 左右社* Amazon この本のことは、発売前から気になってはいたのだけれどまずはナボコフの『ロリータ』を読んでからだろうという気がしていた。ナボコフの作品はいくつか読んだことがあ…

『《世界》がここを忘れても アフガン女性・ファルザーナの物語』

《世界》がここを忘れても アフガン女性・ファルザーナの物語 作者:清末愛砂 寿郎社 Amazon パキスタンのアフガン難民キャンプで生まれ育ったファルザーナは、5年前に家族とともにアフガニスタンに戻ってきました。2020年、理解ある家族の応援もあり、…

2022年11月の読書

11月の読書メーター読んだ本の数:19読んだページ数:5009ナイス数:486兎の島の感想ああこれは、確かに“怖い”。この“恐ろしい”とは別の怖さではないかという気も。この怖さはおそらく、理解できないことがもたらす怖さ。足元がぐらつき、慌てて伸ばした手が…

『兎の島』

兎の島 作者:エルビラ・ナバロ 国書刊行会 Amazon 正直、怖い話は苦手だが、箱から出すと紫をバックに金色の兎が浮かび上がるこの美しい装丁の前を素通りすることができなかった。“スパニッシュ・ホラー”の短編集だと聞いていたので短い話なら、怖さもさほど…

『わたしのペンは鳥の翼』

わたしのペンは鳥の翼 作者:アフガニスタンの女性作家たち 小学館 Amazon 子どもたちは皆、それぞれの家族とともに国外にいて、彼女は一人で暮らしている。誰かが負傷したり、殺されたりする事件が起きても、犠牲者の中に家族がいるかもしれないと心配する必…

『波が海のさだめなら』

波が海のさだめなら 作者:キム・ヨンス 駿河台出版社 Amazon 「カミラはカミラだからカミラなんだ」どうして私に「カミラ」という名前をつけたのかと問うと、養父エリックは穏やかに笑ってそういった。その名前をつけたのは、亡くなった養母のアンだったが、…

『家の本』

家の本 (エクス・リブリス) 作者:アンドレア・バイヤーニ 白水社 Amazon タブッキやジュンパ・ラヒリが認めるイタリアの偉才。白水社エクス・リブリス、78冊目にして初のイタリア文学。そう聞けば、読まないわけにはいかない!と、心躍らせ手に取った本。 …

『ザ・ナイン ナチスと闘った9人の女たち』

ザ・ナイン ナチスと闘った9人の女たち 作者:グウェン・ストラウス 河出書房新社 Amazon 1943年春、エレーヌはフランス国内軍とイギリスとの連絡役を担う航空作戦局(BOA)でレジスタンス活動をしていた。活動を始めた当時彼女は23歳で、物理学と数…

『エミリ、ときどきマーメイド』

エミリときどきマーメイド 作者:リズ・ケスラー 文響社 Amazon エミリは12歳。ママとふたり、ヨットで暮らしている。中学1年になってはじめて水泳の授業を受けることになってものすごく楽しみにしていた。なぜって、水の中に入るのはこれが初めてだったか…

『自由論』

自由論 (光文社古典新訳文庫) 作者:ミル 光文社 Amazon ミルと聞けば、ベンサムの「功利主義」の流れを汲んだ比較的穏健な功利主義者という、教科書的な位置づけは思い浮かぶものの、実際にどんなことを言った人で、どんなものを書いた人かは知らなかった。…

『ロシアのなかのソ連: さびしい大国、人と暮らしと戦争と』

ロシアのなかのソ連: さびしい大国、人と暮らしと戦争と 作者:馬場朝子 現代書館 Amazon 1951年生まれの著者は、1970年から6年間、ソ連・モスクワ国立大学の文学部に留学した。帰国後は、NHKのディレクターとしてソ連・ロシアのドキュメンタリーを…

『ぼくはソ連生まれ』

ぼくはソ連生まれ (群像社ライブラリー) 作者:ヴァシレ・エルヌ 群像社 Amazon 1971年生まれの著者は、ソ連(現在のモルドバ共和国)で少年時代を過ごし、ルーマニアの大学を卒業後、同地で出版関係の仕事につき、2006年に本書で作家デビューした。 …

『囚われのアマル』

囚われのアマル 作者:アイシャ・サイード さ・え・ら書房 Amazon 舞台はパキスタン。パンジャーブ地方の小さな村の比較的豊かな農家に長女に生まれついたアマルは12歳。家の手伝いをし、妹たちの面倒をみながら学校に通っている。勉強が大好きで、大きくな…

『終わりの始まり』

終わりの始まり (韓国女性文学シリーズ) 作者:ソ・ユミ 書肆侃侃房 Amazon 桜のつぼみがほころびはじめ、やがて見頃を迎え、そして散っていく、そんな短い季節の物語だ。末期癌でもってあと2か月と言われている母の看病をするヨンム。幼い頃、父の死を目の…

『ノーサンガー・アベイ』

ノーサンガー・アベイ 作者:ジェーン オースティン キネマ旬報社 Amazon キャサリン・モーランドを子供時代に見かけたことがある人なら、誰も彼女がヒロインになるために生まれてきた人だなどとは思わなかっただろう。こんな書き出しで始まる物語の原稿は、…

『ペドロの作文』

ペドロの作文 作者:アントニオ スカルメタ アリス館 Amazon 9歳のペドロはサッカー好きの少年。両親から誕生日プレゼントにボールをもらったペドロは、ぶつくさもんくをいった。プロのサッカー選手が蹴るような、白と黒の革のボールが欲しかったのに、もら…

『優等生は探偵に向かない』

優等生は探偵に向かない 自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫) 作者:ホリー・ジャクソン 東京創元社 Amazon 『自由研究には向かない殺人』の続編。 自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫) 作者:ホリー・ジャクソン 東京創元社 Amazon シリーズものの…

『小さなことばたちの辞書』

小さなことばたちの辞書 作者:ピップ・ウィリアムズ 小学館 Amazon オックスフォード、サニーサイド、スクリプトリウム(写字室)。マレー博士を中心に辞典の編纂が行われているその部屋で、エズメは育った。面倒を見てくれる母親がおらず、父親がマレー博士…

2022年10月の読書

10月の読書メーター読んだ本の数:22読んだページ数:5946ナイス数:497ダニー (韓国文学ショートショートきむふなセレクション)の感想なにか事件が起きたらしいのだ。その事件には、育児用に特化されたアンドロイドが関わっているよう。それはアンドロイド…

『ダニー』

ダニー (韓国文学ショートショートきむふなセレクション) 作者:イヒョン, ユン クオン Amazon なにか事件が起きたらしいのだ。その事件には、育児用に特化されたアンドロイドが関わっているよう。このモデルに搭載されたAIのバージョンは4・65で、人間の…

『 エヴィーのひみつと消えた動物たち』

エヴィーのひみつと消えた動物たち 作者:マット ヘイグ ほるぷ出版 Amazon イギリスのロンドンに、エヴィー・トレンチという女の子がいた。エヴィーは、ふつうの子じゃなかった。とくべつな子だった。エヴィーのパパがそう言っていたんだ。とくべつな子だっ…

『ある夜』

ある夜 (韓国文学ショートショートきむふなセレクション 14) 作者:ユン・ソンヒ(尹成姫) CUON Amazon 一週間前、私はマンションの広場でキックボードを盗んだ。そんな書き出しで始まる物語の主人公は、夫とふたりで暮らす初老の女性。一人娘は、アメリカ留学…

『虎のたましい人魚の涙』

虎のたましい人魚の涙 作者:くどう れいん 講談社 Amazon 2020年8月号~2022年6月号の『群像』に連載されていたエッセイ「日日是目分量」に書き下ろし1篇をプラスしたエッセイ集。くどうれいんさんの書くものはあいかわらず面白くて、読んでいる…

『野良猫姫』

野良猫姫 (新しい韓国の文学) 作者:ファン・インスク(黄仁淑) クオン Amazon 19歳のファヨルは、大都会ソウルの片隅でコンビニのアルバイトで生計を立てながら一人暮らしをしている。バイトからの行き帰り、少し遠回りをしてとある坂道で、野良猫たちに餌…

『無のまなざし』

無のまなざし (現代ポルトガル文学選集) 作者:ジョセ・ルイス・ペイショット 現代企画室 Amazon 以前読んだ『ガルヴェイアスの犬』の訳者あとがきで、同作で第5回日本翻訳大賞を受賞された木下眞穗さんが、作家の長編第一作として紹介されていた“Nenhum Olh…

『ハナコはいない』

ハナコはいない (韓国文学ショートショートきむふなセレクション 13) 作者:チェ・ユン(崔允) CUON Amazon 迷路のようなベネチアの街を歩きハナコの影を追う彼は彼女の何を知っていたのか こんなキャッチフレーズに惹かれて手にした本作は、1994年李箱文…

『魔女だったかもしれないわたし』

魔女だったかもしれないわたし (わたしたちの本棚) 作者:エル・マクニコル PHP研究所 Amazon 舞台はスコットランドの小さな村ジュニパー。この村に両親と二人の姉と共に暮らす11歳の少女アディは、学校の授業で魔女狩りの歴史を知る。この村の森でもかつて…

『ラスト・チェリー・ブロッサム わたしのヒロシマ』

ラスト・チェリー・ブロッサム わたしのヒロシマ (ほるぷ読み物シリーズ セカイへの窓) 作者:キャサリン・バーキンショー ほるぷ出版 Amazon 机の下にはいりなさい。早く!空襲警報のサイレンが鳴り響き、先生が生徒たちに叫ぶ。物語はそんなシーンから始ま…

『オルガンのあった場所』

オルガンのあった場所 (新しい韓国の文学 23) 作者:シン・ギョンスク(申京淑) CUON Amazon 申京淑(シン・ギョウンスク)のことは、津島佑子との往復書簡を刊行した韓国の作家として知ってはいたが、作品を読むのはこれがはじめて。訳者のあとがきによれば、…

『パリの砂漠、東京の蜃気楼』

パリの砂漠、東京の蜃気楼 作者:金原 ひとみ ホーム社 Amazon 実を言うと金原作品を読むのはこれが初めてだ。読んだこともないのになぜかこの作家には、自分を痛めつけ、血を流しながら書いているようなイメージを持っていて、年若い女性のそんな痛々しさを…