かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『本を読む女(ひと)』

『本を読む女(ひと)』書肆盛林堂 書肆盛林堂《ゾラン・ジヴコヴィチ ファンタスチカ》第2弾! 会いたい、会いたいと思っていた女(ひと)にようやく会えた。 時折こんな風につぶやいてしまうぐらい会いたい女(ひと)だった。旧ユーゴスラビアのベオグラ…

『第二世界のカルトグラフィ (境界の文学)』

第二世界のカルトグラフィ (境界の文学) 作者:中村 隆之 共和国 Amazon 地図を広げて、読み終えたばかりの物語を思い出しながら、あの町この町と指でたどってみる。私はそんな時間が好きだ。本好き仲間を誘って、本で旅する世界旅行を計画したこともある。だ…

『きつね』

きつね 作者:ドゥブラヴカ・ウグレシッチ 白水社 Amazon 『きつね(Lisica)』はユーゴスラビア出身のクロアチア語作家ドゥブラヴカ・ウグレシッチ(1949−2023)が2017年に発表した長編小説だ。長編小説ではあるが構成は6部立てで、各部は作者を思わせる語…

『私の源氏物語ノート』

私の源氏物語ノート 作者:荻原規子 理論社 Amazon 勤め人時代、退職したら岩波書店の新日本古典文学大系の『源氏物語』を手元にそろえ、『更級日記』の著者菅原孝標女のように時間にかまわず読みふけりたいと思っていたという著者は、出版社から若い読者向け…

2024年3月の読書

3月の読書メーター読んだ本の数:17読んだページ数:3165ナイス数:313夏のサンタクロース: フィンランドのお話集 (岩波少年文庫 259)の感想収録されている十三篇のうち、とりわけ私のお気に入りは、「波のひみつ」「春をむかえにいった三人の子どもたち」「…

『夏のサンタクロース』

夏のサンタクロース: フィンランドのお話集 (岩波少年文庫 259) 作者:アンニ・スヴァン,ルドルフ・コイヴ 岩波書店 Amazon むかし、ひとりの男がいて、息子が三人ありました。息子たちは大きくなると、お父さんに向かって、こういいました。 「のくたちに、…

『フェルナンド・ペソア伝 異名者たちの迷路』

フェルナンド・ペソア伝 異名者たちの迷路 作者:澤田 直 集英社 Amazon クリーム色とでもいうのだろうかほんのわずかに黄色がかった白地にほどこされた白箔、まかれた帯はカバーよりも白だ。全体にただ白いだけではない、白箔と帯の白さが、うすく黄色がかっ…

『ペソアと歩くリスボン』

ペソアと歩くリスボン (ポルトガル文学叢書) 作者:フェルナンド ペソア 彩流社 Amazon このタイトルを目にしたあなたはどんな中味を想像しただろう?はじめてこのタイトルを目にしたとき私はてっきりこの本はポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアの足跡をた…

『アナーキストの銀行家』

アナーキストの銀行家;フェルナンド・ペソア短編集 作者:フェルナンド・ペソア 彩流社 Amazon アントニオ・タブッキは、私が愛してやまない作家の一人だ。彼はイタリア人であったが、ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアを敬愛していて、イタリアにペソア…

『ポルトガルの海―フェルナンド・ペソア詩選』

ポルトガルの海 増補版: フェルナンド・ペソア詩選 作者:ペソア,フェルナンド,ペソア,フェルナンド 彩流社 Amazon 私が初めてペソアに出会ったのは1990年代前半で、タイトルに惹かれて1985年に出版されたこの本の前身を手にした時だった。ペソアのこ…

『不安の書』

不安の書: リスボン市に住む帳簿係補佐ベルナルド・ソアレスの 作者:フェルナンド ペソア 新思索社 Amazon ポルトガルを代表する詩人フェルナンド・ペソアは、リスボンの貿易会社ではたらきながら、詩を書き留めて、英語とポルトガル語で数冊の詩集を出しは…

『反省の文学源氏物語』

反省の文学源氏物語 作者:折口 信夫 Amazon 人によっては、光源氏を非常に不道徳な人間だと言うけれども、それは間違いであると言い切るのは、読書会のサブテキストにとあれこれ読み散らかしているところに出会った折口信夫の『源氏物語』評。最初から完全な…

『新編 不穏の書、断章』

新編 不穏の書、断章 (平凡社ライブラリー) 作者:フェルナンド・ペソア 平凡社 Amazon アントニオ・タブッキは、私が愛してやまない作家の一人だ。彼はイタリア人であったが、ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアを敬愛していて、イタリアにペソアの作品を…

『平安人の心で「源氏物語」を読む』

平安人の心で「源氏物語」を読む (朝日選書) 作者:山本淳子 朝日新聞出版 Amazon 『源氏物語』を読んでいると時々とっても気になることに出くわす。たとえば、源氏の君。あちこち人妻に手を出して、あげく父の愛妻と子までなしてしまうのだけれど、当時はこ…

『仙文閣の稀書目録』

仙文閣の稀書目録 (角川文庫) 作者:三川 みり KADOKAWA Amazon 追っ手は必ず来る。それは、よくわかっていた。一冊の本を大事に抱えて走る文杏がめざすのは仙文閣。500年前に書仙が作ったといわれる書庫だ。仙の力に守られ膨大な蔵書を有するその書庫は、…

2024年2月の読書

2月の読書メーター読んだ本の数:26読んだページ数:5775ナイス数:275源氏物語 (岩波新書 青版 667)の感想1924年生まれの著者が1968年に刊行したという少々古い本ではあるが、Kindle Unlimitedで読むことが出来るというので、軽い気持ちで読み始め…

『源氏物語』

源氏物語 (岩波新書) 作者:秋山 虔 岩波書店 Amazon 国士舘短期大学助教授、東洋大学助教授、東京大学文学部教授、東京女子大学教授、駒沢女子大学教授、紫式部学会会長などを歴任した1924年生まれの著者が1968年、東大助教時代に刊行したという少々…

『紫式部ひとり語り』

紫式部ひとり語り (角川ソフィア文庫) 作者:山本 淳子 KADOKAWA Amazon 平安文学の研究者として知られる著者が「冒険的な推測」のもとに書いたというこの本には、『源氏物語』の作者紫式部の生涯が、その日記(『紫式部日記』)と家集(『紫式部集』)を軸に…

『源氏物語を楽しむための王朝貴族入門』

源氏物語を楽しむための王朝貴族入門 (578) (歴史文化ライブラリー 578) 作者:繁田 信一 吉川弘文館 Amazon 『源氏物語』が世に出るための土壌となった概ね十世紀から十一世紀までの平安時代中期の「王朝時代」のあれこれを紹介することで、物語への理解をよ…

2024年1月の読書

1月の読書メーター読んだ本の数:16読んだページ数:3886ナイス数:172源氏物語 03 空蝉の感想読書会のための再読。読了日:01月31日 著者:紫式部源氏物語 02 帚木の感想読書会のための再読。読了日:01月29日 著者:紫式部転生した大聖女は、聖女であるこ…

『傍らにいた人』

傍らにいた人 作者:堀江 敏幸 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 Amazon 2017年~18年に日経新聞に連載された“読む”ことをめぐる52篇のエッセイをまとめたもの。こういうエッセイ集にありがちな、“紹介されているあの作品この作品をなんとして…

『源氏物語』「桐壺」冒頭読み比べ。

源氏物語 01 桐壺 作者:紫式部 ゴマブックス株式会社 Amazon まずは与謝野晶子訳から どの天皇様の御代であったか、女御とか更衣とかいわれる後宮がおおぜいいた中に、最上の貴族出身ではないが深い御愛寵を得ている人があった。最初から自分こそはという自…

『中継地にて-回送電車Ⅵ』

中継地にて-回送電車Ⅵ (単行本) 作者:堀江 敏幸 中央公論新社 Amazon 雑誌の連載や寄稿、文庫の解説、あの人この人への追悼文など、さまざまな媒体の注文に応じて生み出された52篇。 そもそも茶碗に珈琲をつぐなんてふつうの感覚ではありません、これはよ…

2023年12月の読書

12月の読書メーター読んだ本の数:4読んだページ数:1060ナイス数:161恋した人は、妹の代わりに死んでくれと言った。5―妹と結婚した片思い相手がなぜ今さら私のもとに?と思ったら―【電子書籍限定書き下ろしSS付き】の感想うわーこれ、どうするの~。イレー…

『吹きさらう風』

吹きさらう風 (創造するラテンアメリカ) 作者:セルバ・アルマダ 松籟社 Amazon 嫌な音は何キロも前からしはじめていた。その前の晩にトスタードの小さな宿に着いたときは、もう聞こえていた。 レニは、出発する前に点検してもらおうと言ったが、牧師は聞く耳…

『十六の言葉』

十六の言葉 作者:ナヴァー・エブラーヒーミー 駒井組 Amazon 誰しも人生で最初に覚える言葉がある。その言葉が見事にわたしを不意打ちにした。ちょうど、ここで取りあげる十六の言葉と同じように。その言葉から身を守ることは、ただの一度も成功したことがな…

2023年11月の読書

11月の読書メーター読んだ本の数:6読んだページ数:1972ナイス数:129悪役令嬢は溺愛ルートに入りました!? 4巻 (デジタル版SQEXノベル)の感想web連載にはない加筆部分が読みたくてセール価格に釣られてまたもやポチってしまったが、後悔はしていない(^^ゞ…

『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』

ようこそ、ヒュナム洞書店へ (集英社文芸単行本) 作者:ファン・ボルム 集英社 Amazon ソウル市内の閑静な住宅街にオープンした「ヒュナム洞書店」。店主のヨンジュは30代の女性で、なにやら“訳あり”であることは、青白い顔をして店に座りこみ、時折涙を流…

2023年10月の読書

10月の読書メーター読んだ本の数:14読んだページ数:3655ナイス数:203百鬼園事件帖の感想内田百間(※作中でも使われている昭和初期当時の表記)不遇の時代を舞台にしつつも、のちの成功を予感させる物語は、怪奇を扱いながらもさわやかな読後感。元ネタを…

『百鬼園事件帖』

百鬼園事件帖 (角川書店単行本) 作者:三上 延 KADOKAWA Amazon 市ヶ谷の私立大学に通うその青年は、神楽坂にある喫茶店「千鳥」に夕食をとりにきた。学生のたまり場になっているその店は、まずいコーヒーと学生たちの腹を満たす安いメニューで知られたカフェ…