かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

本が好き!

『評伝 伊藤野枝 ~あらしのように生きて~』

評伝 伊藤野枝 ~あらしのように生きて~ 作者:堀 和恵 郁朋社 Amazon 正直に言えば、つい最近まで伊藤野枝には全く興味が無かった。アナーキスト大杉栄と内縁関係にあり、関東大震災直後に憲兵によって大杉と共に虐殺されたということは聞き知ってはいたが、…

『文學の実効 精神に奇跡をもたらす25の発明』

文學の実効 精神に奇跡をもたらす25の発明 作者:アンガス・フレッチャー CCCメディアハウス Amazon 小説や詩を読んで心が癒された。そうした経験を持つ人は多く、「文学は心に効く」とはよく言われることである。しかし、それは本当なのか?文学作品が人間の…

『私の唇は嘘をつく』

私の唇は嘘をつく (二見文庫 ク 12-2) 作者:ジュリー・クラーク 二見書房 Amazon 詐欺師のメグと彼女に復讐を誓うジャーナリストのキャット。十年前に何があったのか、はっきりとは明かされないまま、物語は幕を開ける。メグとキャット、それぞれのパートに…

『明るい夜』

明るい夜 (ものがたりはやさし) 作者:チェ・ウニョン 亜紀書房 Amazon 心というものが取り外しのできる体内の臓器だったなら、胸の中に手を入れて取り出し、温かいお湯で洗ってあげたかった。そして隅々まですすいで水分をタオルで拭き取り、日当たりと風通…

『見習い警官殺し』

見習い警官殺し 上 〈ベックストレーム警部シリーズ〉 (創元推理文庫) 作者:レイフ・GW・ペーション 東京創元社 Amazon 見習い警官殺し 下 (創元推理文庫) 作者:レイフ・GW・ペーション 東京創元社 Amazon 以前読んだ同じ作者による『許されざる者』がとて…

『許されざる者』

許されざる者 (創元推理文庫) 作者:レイフ・GW・ペーション 東京創元社 Amazon 国家犯罪捜査局元長官のラーシュ・マッティン・ヨハンソンは、好物のホットドッグを手にしたまま脳塞栓で倒れ、一命はとりとめたものの右半身に麻痺が残ってしまう。激しい頭痛…

『消えたソンタクホテルの支配人』

消えたソンタクホテルの支配人 (YA!STAND UP) 作者:チョン ミョンソプ 影書房 Amazon 1910年の韓国併合によって日本の植民地支配がはじまる3年前、1907年に実際に起きたある事件を元に創作された韓国のYA小説。舞台は漢城(ハンソン:現在のソウ…

『終わりの始まり』

終わりの始まり (韓国女性文学シリーズ) 作者:ソ・ユミ 書肆侃侃房 Amazon 桜のつぼみがほころびはじめ、やがて見頃を迎え、そして散っていく、そんな短い季節の物語だ。末期癌でもってあと2か月と言われている母の看病をするヨンム。幼い頃、父の死を目の…

『無のまなざし』

無のまなざし (現代ポルトガル文学選集) 作者:ジョセ・ルイス・ペイショット 現代企画室 Amazon 以前読んだ『ガルヴェイアスの犬』の訳者あとがきで、同作で第5回日本翻訳大賞を受賞された木下眞穗さんが、作家の長編第一作として紹介されていた“Nenhum Olh…

『明日は遠すぎて』

明日は遠すぎて 作者:チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 河出書房新社 Amazon 献本に応募したのは、著者がナイジェリア出身だと知ったからだ。既に3冊目の邦訳本だというが、私はこれが初めての出会いだった。自分がよく知らない国を舞台に繰り広げられる…

『14歳から考えたい アメリカの奴隷制度』

14歳から考えたい アメリカの奴隷制度 (A Very Short Introduction) 作者:ヘザー・アンドレア・ウィリアムズ すばる舎 Amazon オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)の"Very Short Introductions" (VSI) は、歴史や政治、宗教、哲学、科学、…

『フランスの高校生が学んでいる10人の哲学者』

フランスの高校生が学んでいる10人の哲学者 作者:シャルル・ペパン 草思社 Amazon いわゆる“哲学の本”を読むのはいつ以来だろうか。ヨースタイン・ゴルデルの『ソフィーの世界』を入れて良ければ、25年ぶりぐらい?いやいや、そのテの“哲学的”な作品ならば…

『春の宵』

春の宵 (韓国女性文学シリーズ4) 作者:クォン・ヨソン 書肆侃侃房 Amazon 書肆侃侃房の韓国女性文学シリーズは全部読もうと決めているので事前に内容をチェックすることなく本を手にした。読み始めたらなんだか無性にお酒が飲みたくなってなんだろうこの気持…

『君の顔では泣けない』

君の顔では泣けない (角川書店単行本) 作者:君嶋 彼方 KADOKAWA Amazon 30という小見出しの後に年に一度だけ会う人がいる。夫の知らない人だと、思わせぶりな書き出しで始まる物語。叶わなかった昔の恋の相手かなにか?不倫ものではないでしょうね?と、構え…

『我らが願いは戦争』

我らが願いは戦争 (韓国文学セレクション) 作者:チャン・ガンミョン,張康明 新泉社 Amazon 黄色地に黒があしらわれた危険物を思わせる装丁に過激なタイトル。朝鮮半島を舞台にした近未来ディストピア小説だときけば、少々厄介な物語であろうことは想像に難く…

『オリオンと林檎』

オリオンと林檎​ (韓国文学の源流 短編選2) 作者:朴泰遠,李孝石,金裕貞,李箕永,朴栄濬,朴泰遠,玄徳,李泰俊 書肆侃侃房 Amazon 書肆侃侃房の「韓国文学の源流 短編選」は、古典作品から現代まで、その時代を代表する短篇の名作をセレクトする全10巻刊行予定…

『私のおばあちゃんへ』

私のおばあちゃんへ (韓国女性文学シリーズ) 作者:ユン・ソンヒ,ペク・スリン,カン・ファギル,ソン・ボミ,チェ・ウンミ,ソン・ウォンピョン 書肆侃侃房 Amazon 思えば私も子どもの頃は、自分も大人になったら、結婚し子どもを産んで母になり、やがては祖母に…

『フレデリック・ショパン──その情熱と悲哀』

フレデリック・ショパン──その情熱と悲哀 作者:フランツ・リスト 彩流社 Amazon 新刊情報を知ったとき、あのショパンの生涯を、あのリストが書き残す!そんな本があるの!?と、一瞬、耳も目も疑った。だがしかし私が知らなかっただけで、どうやらこれ、世界…

『立ちどまらない少女たち: 〈少女マンガ〉的想像力のゆくえ』

立ちどまらない少女たち: 〈少女マンガ〉的想像力のゆくえ 作者:大串尚代 松柏社 Amazon “<少女漫画>的想像力のゆくえ”という副題と帯にある「少女文化」と「外国文学」の文字に惹かれて手をのばした本はアメリカ女性文学を専門とする慶應義塾大学文学部教…

『骸骨』

骸骨:ジェローム・K・ジェローム幻想奇譚 作者:ジェローム・K・ジェローム 国書刊行会 Amazon この装丁だし、てっきりおどろおどろしく怖い話が沢山詰まっているに違いないと思い込んでいて、(寝る前には読めそうにないけれど、さていつ読もうか?)などと…

『キリンが小説を読んだら』

キリンが小説を読んだら 書肆侃侃房 Amazon 大きな声では言えないが、私は本当に現代日本文学にうとい。いろいろ面倒なことが起きかねないので「趣味は読書」などとは、極力言わないようにしているのだが、そういう情報はどこからともなく漏れてしまうもので…

『エルサレム〈以前〉のアイヒマン』

エルサレム〈以前〉のアイヒマン 作者:ベッティーナ・シュタングネト みすず書房 Amazon 1961年にアメリカ・エール大学のミルグラム博士によって行われた実験は、権威者による命令が個人を従属させ、他人に電気ショックを与えるといった残酷な行為さえも…

『レースの村』

レースの村 作者:片島麦子 書肆侃侃房 Amazon ひょんなことから、大学の友人サクマの帰省につきあうことになったぼく。特別仲が良いわけでもなく、学部が同じだけの大勢いる友人の一人でしかなかったサクマの実家は、田舎だとは聞いていたが公共交通機関網か…

『四月のミ、七月のソ』

四月のミ、七月のソ 作者:キム・ヨンス 発売日: 2021/04/05 メディア: 単行本(ソフトカバー) 慶州南山の四季を撮影する写真集を依頼されるまで、ソンジンはそこにこれほど多くの仏像が、しかも首を切られたまま残っているなんて知る由もなかった。そんな書…

『とにかく、トッポッキ』

とにかく、トッポッキ (K-BOOK PASS 3) 作者:ヨジョ 発売日: 2021/03/20 メディア: 単行本 ヨジョ(요조)さんというアーティストは「期待を裏切らない」というかいつも予想の斜め上をいく感じが新鮮。彼女のことを知ったのは「K-BOOKフェスティバル 2020 in…

『あるヴァイオリンの旅路: 移民たちのヨーロッパ文化史』

あるヴァイオリンの旅路: 移民たちのヨーロッパ文化史 作者:フィリップ・ブローム 発売日: 2021/02/26 メディア: 単行本(ソフトカバー) “一度は音楽家を志し、若いころはそれにすべてを賭けたものだったが、どんなに意志が強くても努力しても自分にその才…

『評伝 九津見房子 ~凛として生きて~』

評伝 九津見房子 ~凛として生きて~ 作者:堀 和恵 発売日: 2021/01/14 メディア: 単行本 2020年は、九津見房子生誕130年、没後40年の年だった。それに合わせたのかどうかはわからないが、みすず書房から刊行された本を読み、そこからの派生で学生時…

『オビー』

オビー (韓国女性文学シリーズ9) 作者:キム・ヘジン 発売日: 2020/11/29 メディア: 単行本(ソフトカバー) 『中央駅』を読んだときにも思ったことだがキム・ヘジンという作家は、常にまっすぐ社会を見つめている。それも、ゴミが散乱する細くて暗い路地裏や…

中央駅

中央駅 作者:キム・ヘジン 発売日: 2019/11/12 メディア: 単行本(ソフトカバー) 先日、久々に上京する機会があってこれまた久々にビルの高層階から窓の下を眺めた。所狭しと立ち並ぶ建物行き交う車駅に吸い込まれていく人々に地下道から掃き出されてきたよ…

『ダフォディルの花』

ダフォディルの花:ケネス・モリス幻想小説集 作者:ケネス・モリス 発売日: 2020/09/18 メディア: 単行本 翻訳家の中野善夫さんが飯野浩美さんと共訳した新刊が、例によって例のごとく国書刊行会から出て、装画も林由紀子さんだと知った時、これもまたきっと…