我ながらすごくいいレビューが書けた。
このところくすぶっていたあれこれがすっきり晴れる会心の出来だと思った。
けれども、それはどうやら夢の中のことだったようで、
朝、目覚めたら書いたはずのものは1行も残っておらず、
ただただ忘れてしまったという無念さだけが残っていた。
そういえば、ペソアも
そんなエピソードを持っていたような……
と、久しぶりにお気に入りの本を開いた。
散歩の途中で、私は完璧な文をいくつも作った。だが、帰宅すると、まるで想い出せない。これらのフレーズが名状しがたい詩情を持っていたのは、ほんの一瞬しか存在しなかったからなのか、それとも、それらがけっして書き留められなかったからなのか。 (p170)
相変わらず、レビューは書けていないけれど、
いつの間にか悔しい思いは消えていた。