かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

暗やみの中で一人枕をぬらす夜は

 

 久しぶりに詩集を買った。
気になる本があって覗いた出版社のHPで
一目惚れした本だ。

早速手にとり
ふと開いたページに書かれた一節を
声を出して読んでみる。

何だか歌をうたいたい気分
誰かにそっと打ち明けたい気分


前後の脈絡なしに
偶然目にした
ただそれだけのことなのに
この本を買って良かったとしみじみ思う。

当たり前のことではあるが
詩人はただ思いついた言葉を並べているわけではない。
自分の想いをこめて詩をつくる。

だからもちろん
詩にはつくられた背景がある。

この本の場合、
「若くして病を患い、闘病中にドイツ人青年と結婚した詩人が、
命を終えるまでの五か月間にノートに書き綴ったものだ」ということ。

そう知れば
ますます切ない。

けれどももしそうと知らなくても
詩人の言葉はやはり心にしみてくる。

高い空の上で
一点の黒い鳥が風と波のりをしている
雲は四方からしぶきをあげて
お前をめぐっておしよせてくる

ああ お前はひとりぼっちだけれど
この天と地は今 お前のもの


一篇の詩でも
その一節でも
気に入ったものがあったら
声に出して読んでみる。
ノートに書き写すこともある。

私がそんな風に自分の言葉を味わっていると知ったなら
詩人はどんな顔をするだろうか。
時々、ふと、そんなことを思いながら、
背表紙をなでる。