かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

2020年7月の読書

7月の読書メーター
読んだ本の数:17
読んだページ数:3648
ナイス数:641

三十五氏三十五氏感想
あれこれと思い出を語る追悼文。私は昔、直木三十五の『長谷川時雨が卅歳若かつたら』を読んで、三十五最低!と腹を立てたことがあったのだけれど、長谷川時雨自身は、ふふ、ふふっと、軽くいなしていたんだろうな。
読了日:07月01日 著者:長谷川 時雨
あるときあるとき感想
「今朝ふと、雨上りの草の庭を眺めてゐて、海をおもつた。それも涯しないひろい大洋が戀しくなつたのだ。」長谷川時雨のこういうところ、好きだなあ。
読了日:07月01日 著者:長谷川 時雨
わたしの幸せな結婚 (富士見L文庫)わたしの幸せな結婚 (富士見L文庫)感想
#カドフェス オンライン読書会に参加すべく読んでみた。和風シンデレラストーリーという触れ込みどおり、継母と異母妹に虐げられた主人公が、当代きっての貴公子と結ばれるという展開なのだが、そこに「異能」が加わってまだまだ波瀾が続きそう。伏線の張り方がわかりやすいので、次巻以降の先の展開も大筋予測がつくが、かえって安心してニヤニヤしながら読み進められてしまうのも魅力か。但し主人公が家族から身体的虐待を受けるシーンがあるので、苦手な方は要注意。
読了日:07月02日 著者:顎木 あくみ
芳川鎌子芳川鎌子感想
伯爵家の家督相続のため婿を取った鎌子は、年下のお抱え運転手と恋に落ち心中を図るが一人一命を取り留めた。いわゆる「千葉心中」事件の当事者について書き記した、長谷川時雨の“近代美人伝”。事件報道や世間の噂を拾いつつも、努めて冷静にできるだけ公平な見方をしようとする時雨の姿勢には好感が持てるが、家へ押しかけて罵倒するわ、あちこち張り紙するわ……と、事件後たびたびあったという、鎌子に対する「世間の」過剰なパッシングには驚かされた。まるで自分が審判者にでもなったような行動を取る人って、今も昔もいるんだねえ。(溜息)
読了日:07月05日 著者:長谷川 時雨
遠藤(岩野)清子遠藤(岩野)清子感想
長谷川時雨“近代美人伝”の1つ。死後いつまでもお墓がなかった遠藤清子のために、青鞜社の同人たちがお金を出し合って墓を建て法要を営むシーンから始まる。その法要に時雨自身も参加しているのだが、(清子さんは悦んでいるだろう)という思いよりも時雨の胸を衝いたのは、歳月はこんなにもみんなを老わしたのか…ということだったという。清子と岩野泡鳴のあれこれも興味深くはあったが、私自身もやはり、時雨やらいてうたちの、困難な時代に同じ志をもった女たちの深い結びつきに心打たれた。
読了日:07月05日 著者:長谷川 時雨
敗残者 (東欧の想像力)敗残者 (東欧の想像力)感想
多くのアルバニア人が、アドリア海を越えてイタリアへ渡ったその時期に、かの地に留まり続けた作家のデビュー作は、静かに、でも圧倒的な存在感をもって、私の頭の中にも居座り続ける。おそらく、この先もずっと。★★★★★
読了日:07月09日 著者:ファトス コンゴリ
残業禁止 (角川文庫)残業禁止 (角川文庫)感想
#カドフェス 制覇読書会に参加すべく読んでみた本は、「働き方改革」をテーマにしたお仕事小説だった。このジャンルはやっぱり、時代を反映しているんだなあ。年代毎のお仕事小説比較とか、読み比べるのも面白そうな……。いやいや私はしないけど、たぶん…きっと…。(^^ゞ
読了日:07月13日 著者:荒木 源
言葉の守り人(新しいマヤの文学)言葉の守り人(新しいマヤの文学)感想
マヤファンタジーと聞いてぜひ読みたいと思っていた本を書評サイト本が好き!を通じていただいた。2012年にメキシコで児童図書として出版された『マヤの賢人グレゴリオおじいさん』の全訳。おじいさんから受け継いだマヤの伝承と、その中に息づくマヤの人々の人生観を描いた物語であると同時に、語り部としての“ぼく”の成長を描いた物語…そう読み解いたつもりだったが、本編読了後に訳者あとがきを読んだら目から鱗がボロボロと!折に触れ2度3度と読み直してみなくては。
読了日:07月14日 著者:ホルヘ・ミゲル・ココム・ペッチ
暗やみの中で一人枕をぬらす夜は―ブッシュ孝子全詩集暗やみの中で一人枕をぬらす夜は―ブッシュ孝子全詩集感想
「若くして病を患い、闘病中にドイツ人青年と結婚した詩人が、命を終えるまでの五か月間にノートに書き綴ったもの」と知ればますます切ないが、そうと知らなくても詩人の言葉には心にしみてくるものがあった。
読了日:07月17日 著者:ブッシュ 孝子
アコーディオン弾きの息子 (新潮クレスト・ブックス)アコーディオン弾きの息子 (新潮クレスト・ブックス)感想
以前雑誌に掲載された冒頭の1章を読んで以来、翻訳刊行を待ち焦がれていたバスクの長篇小説。若き日々の回想録を書いたダビと、それを元に小説を書いたヨシェバという、一つの物語に二人の語り手、二人の作者が存在する物語は、それぞれが知り得なかったあれこれを互いに補完し合いながら進んでいく。父親との軋轢、恋、友情、郷愁……と、誰でも多少は身に覚えのあるあれこれが、切なさのあまり胸が痛くなるような旋律を奏でるが、それと平行して、バスクの人々が置かれた複雑な状況がズシンとお腹に響くような低音のリズムを刻み続ける。
読了日:07月20日 著者:ベルナルド アチャガ
影を呑んだ少女影を呑んだ少女感想
十七世紀、清教徒革命の混乱の最中にある英国を舞台に、 運命に呑み込まれることなく、自分の意思で懸命に生き抜こうとする少女の姿を描く物語は、いろいろな読み方が出来、 二度三度と楽しめること請け合いの傑作ファンタジー。文句なしに★5つ。ちなみにわたし、あのこなら、わたしのなかにいてもいいかも!
読了日:07月20日 著者:フランシス・ハーディング
わたし、定時で帰ります。 (新潮文庫)わたし、定時で帰ります。 (新潮文庫)感想
新潮文庫の100冊2020の制覇をめざすネット読書会に参加すべく読んでみた本。テレビドラマ化もされた人気のお仕事小説ということで、軽い気持ちで手に取ったのだが、意外や意外(?)、デフォルメされたキャラ立ちや、社内における結衣の味方などエンタメならではと思われる要素が、それなりに現実感を薄めてはいるものの、描かれているのは読んでいて痛いぐらいに職場あるあるで、OL時代のあれこれをおもいっきり思い出してしまったわ(^^ゞ
読了日:07月21日 著者:朱野 帰子
少女は夜を綴らない少女は夜を綴らない感想
#カドフェス 2020 制覇読書会に参加すべく読んでみた本。殺人計画を日記に綴る少女と聞いて、もしかして苦手なイヤミス系かとおそるおそる読み始めたが、予想に反してなかなか繊細な物語だった。それにしてもムンクの叫びがモスキート音に起因するものだったとは!?
読了日:07月24日 著者:逸木 裕
いちねんかんいちねんかん感想
両親が湯治にでかけ、留守を預かることになった若だんなの一年間。安心安定の面白さ。それにしても若だんなだけでなく、あやかしたちまで成長するとは!?
読了日:07月25日 著者:畠中 恵
海女たち―愛を抱かずしてどうして海に入られようか海女たち―愛を抱かずしてどうして海に入られようか感想
白地に鮮やかな椿の花をあしらった装丁が印象的なこの本が 韓国済州島出身の詩人による詩集だと知って興味を持った。海女闘争、出稼ぎ、徴用、四・三事件……歴史的背景には疎いけれど、まずは読んでみようと手に取ってみた。最初の衝撃は、ページをめくりはじめてすぐに訪れた。陳腐な言い方ではあるけれど、どの詩も涙なくしては読めない。波の音と共に海女たちの慟哭がお腹のあたりに響いてくる感じ。またすごいものを読んでしまった。
読了日:07月27日 著者:ホ・ヨンソン,許 榮善
ハミングバードハミングバード感想
「私」の部屋に大江さんの幽霊がはじめて現れたのはひと月ほど前のこと。30半ばの「私」が一大決心をして購入した中古マンション、大江さんは売り主、つまりこの部屋の元住人だった。朝の日課を終えて出勤していく…半透明の大江さんは毎日、部屋に住んでいた時と同じように生真面目に生活している。「私」の存在には全く気づかずに……。これまでだって幽霊譚はいくつも読んできたけれど、こんなに穏やかな気持ちになれる幽霊には滅多にお目にかかれない。思わず大江さんの真似をして声を出して読んでみてしまった。
読了日:07月28日 著者:相川英輔
薔薇はシュラバで生まれる―70年代少女漫画アシスタント奮闘記― (EAST PRESS COMICS)薔薇はシュラバで生まれる―70年代少女漫画アシスタント奮闘記― (EAST PRESS COMICS)感想
今だから描ける!?かつてのアシスタント体験を元に、美内すずえくらもちふさこ樹村みのり山岸凉子三原順…と豪華絢爛のシュラバを大公開。漫画家たちの顔が、作風に合わせて描き分けられているのも楽しい。
読了日:07月29日 著者:笹生 那実

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