かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『トムは真夜中の庭で』

 

トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))

トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))

 

 その夏、弟のピーターが麻疹にかかったために
トムは叔母夫婦の家にあずけられることになった。

叔母さんたちの住んでいるのは元々大きなお屋敷だった建物を、
幾つかに仕切った賃貸アパートだった。
三階には大家である老婦人がすんでいて、
屋敷の玄関ホールにある大きな古時計もその大家さんのものだという。

トムは麻疹の潜伏期間である可能性があるうちは外出することができない。
病気でもない腕白少年にとって、
一緒に遊ぶ相手もいない見知らぬ家に、
一人閉じ込められるのはとてもつらいこと。
おばさんの料理は美味しいが
一日家でゴロゴロしているばかりでは、夜寝付けないのも当たり前だった。

ある晩、トムは夜中に大時計が13回なるのを聞いた。
確かに13回!
好奇心に駆られ、こっそり部屋を抜け出して時計を見に行ったトムは
月明かりに誘われて扉を開く。
そこには実際にはあるはずのない大きな庭が広がっていた。

夜ごとその庭を訪れるようになったトムは
パティという少女と出会い、親しくなるのだが……。


とても有名な児童文学として
なんとなくストーリーは知ってはいたが実は初読み。

読んでびっくり、これはすごい。
なんとも深みのある物語だった。


「時間」を軸にした物語だとおもって読み進めると
「庭」という「楽園」の喪失と回復を描いた物語でもあって、
トムの視点から読んでいるつもりが
パティの視点で描かれる物語も浮かび上がってくる。

岩波少年文庫の他の巻と同様、巻末には対象年齢が記されていて
「小学上級以上」とあるけれど、
これはやっぱり、
小学生は小学生なりの、
年齢と読書経験をそれなりに重ねた大人には大人なりの
読み方ができる物語なんだろう。

時間をさかのぼって
子どもの私がこの物語をどんな風に受け止めるのかを知ることはできないのが、
少し残念ではあるけれど…。