かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

2020年9月の読書

9月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:3611
ナイス数:564

マノン・レスコー (光文社古典新訳文庫)マノン・レスコー (光文社古典新訳文庫)感想
『文学こそ最高の教養である』からの派生読書。オペラの題材として大まかなストーリーは知っているつもりだったが,読んでみるとあちこちツッコミどころもあり,予想以上に面白かった。巻末の解説には『文学こそ…』とはまた違った興味深いあれこれが。ここから今度は『椿姫』にいくべきか,はたまた『無邪気と悪魔は紙一重』にいくべきか?どっちにも行ってしまいそうな自分がこわい(;゚ロ゚)
読了日:09月29日 著者:プレヴォ
サブリナとコリーナ (新潮クレスト・ブックス)サブリナとコリーナ (新潮クレスト・ブックス)感想
11篇の短編はいずれも、デンバーとその近郊が舞台。人口の三割以上がヒスパニック、ラティンクス、アメリカ先住民だというこの地域は、地域再開発による「高級化」が進んでいて、元々そこに住んでいた人びとが、その町に住み続けられなくなるという事態に見舞われているのだという。何世代にもわたって住み続けてきた家土地を奪われるその痛みは、収録作品の中にも繰り返し描かれている。そうこれは“移民”の物語ではなく、後から押し寄せてきた人たちの波の間で、溺れそうになりながらもがき苦しむ人びとの物語だった。
読了日:09月28日 著者:カリ ファハルド=アンスタイン
フィオリモンド姫の首かざり (岩波少年文庫 (2135))フィオリモンド姫の首かざり (岩波少年文庫 (2135))感想
祝 #岩波少年文庫 #創刊70周年 読書会に参加すべく手にした『針さしの物語』がなかなか面白かったので、メアリ・ド・モーガンの短篇集をもう1冊読んでみることに。なんといっても表題作が面白かった。この作者の一連の作品は、フェミニズム解読をしても面白いかも。他にもなかなか読み応えのある短編が6編。絶版のままにしておくのはもったいない1冊だ。
読了日:09月25日 著者:ド・モーガン
言葉に命を~ダーリの辞典ができるまで言葉に命を~ダーリの辞典ができるまで感想
“言葉の収集家”、ウラジーミル・ダーリ。全4巻20万語を収録した『現用大ロシア語詳解辞典』をたったひとりで完成させた人。本書は1801年に帝政ロシアに生まれ、およそ半世紀にわたり辞書を編纂し続け、晩年にはなんと14回も校正をした上でこの辞典を世に送り出したダーリの伝記だ。プーシキンの親しい友人で、ゴーゴリに絶賛された人でもある。そんな彼の伝記が、読み物として面白いだけでなく、「言葉」についてあれこれ考えさせられもするのは、ある意味当然のことだった。
読了日:09月22日 著者:ポルドミンスキイ
ありふれた祈り おいしいコーヒーのいれ方 Second Season IX (集英社文庫)ありふれた祈り おいしいコーヒーのいれ方 Second Season IX (集英社文庫)感想
#ナツイチ 読書会のため、10年、6冊分の中断を経て、最終刊だけ読んでも意味がわかるものだろうか?と思いながらおそるおそる読み始めたのだが、ここまでの様々な事情はこの最終巻だけ読んでもよくわかるように工夫されていた。それもダイジェストな紹介などという生やさしいものではない。読み始めてしばらくは、なんてこと!そんなことがあったのか!そんなことになっているのか!!と涙が止まらなくなって驚くはめに。ずっとごぶさたしていたのに、ちょっぴり苦いおいしいコーヒーを飲ませて貰った。
読了日:09月21日 著者:村山 由佳
魔宴魔宴感想
気になっていた本を書評サイト本が好き!を通じていただいた。酒に飲まれ愛に溺れ、自意識に苛まれ贅沢に明け暮れると同時に貧困にあえぐ、そんな自堕落な半生を描いた自伝的小説。読書量や知識は半端ではなく、鋭い文藝批評も読み応えがあるが、目を覆いたくなるほど破廉恥で、あり得ないほど自虐的、痛々しいほど寂しげで、どこか艶めかしい。読んでいるとすごく切ない気分にさせられるのに、この語り手を信頼して良いものかどうかとまどうほどにスキャンダラス。とにもかくにもものすごくヤバイ感じの本だった。
読了日:09月16日 著者:モーリス・サックス
砂漠が街に入りこんだ日砂漠が街に入りこんだ日感想
もしかすると人は喧噪の中にいればいるほど、寂しくなるときがあるのかもしれない。 “荷物をまとめようとしていたら、突然、何か重要なものをなくした気持ちに襲われるも、それが何なのかはっきりとはわからずに、何かを置いてきてしまったという感覚をどうしても払拭することができない。” おそらく、誰でもそんな気持ちになることがあるだろう。 でも、そう聞くと、自分もまたなにかをなくしたような気がしてきて、思わず当てもなく身の回りを探してしまう。 そんなあなたに、お薦めの1冊。
読了日:09月14日 著者:グカ・ハン
なんてやつだ よろず相談屋繁盛記 (集英社文庫)なんてやつだ よろず相談屋繁盛記 (集英社文庫)感想
#ナツイチ 制覇読書会に参加すべく読んでみた。うっかり手を伸ばしたら、シリーズものの1作目で、相談屋は開業はした者のちっとも繁盛していなかった。これは、行く末を確認するべきなのでは…と、またもや読みたい本のリストをのばすなど…(^^ゞ
読了日:09月10日 著者:野口 卓
針さしの物語 (岩波少年文庫 (2136))針さしの物語 (岩波少年文庫 (2136))感想
祝 #岩波少年文庫 #創刊70周年 読書会に参加すべく読んでみた。同じ作者の別の作品は大昔に読んだことがあったはずだけれど、こちらは初めて。“クラシックで幻想的な短篇集”というウリではあるが、伝承文学にありがちな残酷さや、おとぎ話によくあるような教訓めいた説教臭さはあまりなく、大方の予想をほんのちょっとずらしたような結末が面白かった。
読了日:09月09日 著者:メアリ・ド・モーガン
玉妖綺譚 (創元推理文庫)玉妖綺譚 (創元推理文庫)感想
Kindle沼を掃除していたら出てきたのがこれ。セールの時にでも購入したのか,石(玉)から生まれる玉妖だった。あの伝説,あのファンタジー,あの物語と,あれやこれやを掛け合わせたような設定がなかなか面白いが,登場人物の造り込みが甘いのか皆一様に軽薄すぎてせっかくの舞台がなんだか勿体ないような気がしないでも。続編を読めば主人公と作家,両方の成長が感じられたりするのかなあ?
読了日:09月08日 著者:真園 めぐみ
誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ (となりの国のものがたり4)誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ (となりの国のものがたり4)感想
『原州通信』を気に入って、この作家の作品はチェックしなくてはと思っていた。昔っから「あんな男はやめておけ!」といわれるような男に弱い私は、どうもかなり惚れこんでしまったようだ。こんなにダメ男を描くのが上手くて、面白いだけでなく深みがあって、サービス精神が旺盛な作家に夢中にならないわけにはいかない。もっとも私が惚れたのは、小説の中に登場する情けない人代表みたいな小説家のイ・ギホではなく、ダメダメ男を描かせると天下一品!の小説家のイ・ギホ氏の方ではないかと思うのだけれど、その境目がちょっと曖昧だったり…。
読了日:09月07日 著者:イ・ギホ
世界の文学、文学の世界世界の文学、文学の世界感想
なにがすごいって、様々な国や地域の様々な言語で書かれた17作品のうち、日本の1作品をのぞくすべてが、重訳ではなく、書かれた言語から直接、日本語に翻訳されているということ!もちろん中味も面白い。
読了日:09月03日 著者: 
夜の舞・解毒草 (新しいマヤの文学)夜の舞・解毒草 (新しいマヤの文学)感想
<新しいマヤの文学>第三弾はタイプの異なる2つの中篇を収録。リズムのある美しい言葉で語りあげられている「夜の舞」は,薄幸の少女の幸せ探しの旅物語。蜘蛛の企みやフクロウの鳴く意味などが幻想的な彩りを添え、人びとの暮らしぶりやその口にのぼる言い伝えなどがエキゾチックな雰囲気を醸し出す。「解毒草」は枠物語的な構造の連作短編で,幻想的でありながら描かれる女達の貧困と苦難が生々しい。今回も訳者あとがきが充実していて十二分の読み応え。幸運にも書評サイト本が好き!を通じていただいたものだが,この先何度も読み返すだろう。
読了日:09月01日 著者:イサアク・エサウ・カリージョ カン,アナ・パトリシア・マルティネス フチン

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