「父キトク」の報に、急遽ベオグラードから駆けつけた詩人は
病床に付き添いながら
病院の売店で購入したノートに詩を綴った。
全部で7冊にもなったというそのノートを
1冊の詩集にまとめるのに5年の歳月を要したというのだが、
それはおそらく、
父の死と向かいある娘にとってとても大切な時だったのに違いない。
そんな風に思える詩集だ。
在りし日の思い出や
病床の父の様子
主を失った実家の庭など
平易な言葉で歌い上げられるその詩が
読む者の心に訴えかけるのは
大切な人を失った哀しみだけでなく
誰かと共に重ねるその一瞬一瞬が貴重なものであることを
改めて思い起こさせてくれもする。
この1年、
新型コロナの影響で帰省できないでいる実家が
無性に恋しくなりもした。