かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『ジェーン・エア (上)』

 

 仮にも翻訳小説好きを自認するならば、
未だに『ジェーン・エア』を読んだことがないというのはマズイでしょう。
とは、前々から思ってはいた。

なにしろ英米文学には、
主人公の少女がこの物語に夢中になる場面があったり、
あきらかにこの小説に影響を受けているといわれていたりする作品が沢山あって、
そういうものを目にするたびに、
「読まなくてはなあ~」とは思っていたのだ。

ストーリーならなんとなく知っている。

両親を早くに亡くして親戚の家に引き取られた少女がそこでいじめられ
やがて寄宿学校に入れられて辛い思いをしながらも成長し
家庭教師として勤めたお屋敷の主人と恋に落ち、
いざ結婚!というときになって夫となるべき男に重大な秘密があることを知り
途方に暮れて路頭に迷い、
人の好意に助けられ再び生きる気力を取り戻し
なんだかんだの末に、1度は諦めたはずの相手と結ばれる……

今ではよくありそうなそんな話が、
1800年代半ばには、色々な意味で
とてもセンセーショナルな物語として
読む者を驚愕させたのだということも。

なまじ何となく知っているだけに
なかなか手が伸びなかったこの作品を今回初めて読んでみた。

読んでみるあたっては、例によって例のごとくどの訳で読むかと悩むのはお約束だ。

今回は、新潮文庫の大久保康雄訳と光文社古典新訳文庫小尾芙佐訳を
いずれもKindle無料サンプルで読み比べてみて決めることに。

まずは意地悪な叔母さんが幼いジェーンに向かってはなつ言葉から

光文社古典新訳文庫
「ジェイン、わたしはね、そんなふうに口答えをする子は嫌いです。子供が目上のものにそんな態度をとるなんてぜったい許されることではありませんよ。どこかほかへいってちょうだい。気持ちよく話ができるようになるまでその口を閉じておおき」

 

新潮文庫
「ジェーン、わたしは理屈をこねたり、すぐにつっこんできたりする子は嫌いですよ。それに、子供のくせに、そんなふうに、大人に口答えするなんて、ほんとうに何ということでしょう。どこかどの辺に腰をかけて、愉快に口がきけるようになるまで黙っていらっしゃい!」


果たしてあなたはどちらがお好み?

続いては問題。


右手のほうは緋色のカーテンにさえぎられてなにも見えない。左のほうは透明な硝子窓が南風は防いでいるもの、陰鬱な十一月の昼の風景まだ閉め出してはくれない。本の頁を繰りながら、ときおり冬の午後の景色に目をやった。遠くには青白い霧と雲が、近くには濡れた芝生と突風にあおられる灌木の林、雨は絶え間なく横なぐりに吹きつけ、風がひゅうひゅうと悲痛な声を上げて吹き抜けていく。

 


深紅の帳の襞(ひだ)が右手の視界をさえぎり、左側には透明な窓ガラスがあってわたしを守ってくれたけれど、荒涼たる十一月の日からわたしを引きはなしはしなかった。書物のページをめくりながら、ときどきわたしは、冬の午後の風景に目を注いだ。はるか彼方には青白い霧と雲がただよい、近くには、ぬれた芝生と、嵐にうたれた灌木が見え、小(お)やみなく降る雨は、長い悲しげな音を立てて通りすぎる疾風に、はげしく吹き立てられていた。


AとB、どちらが光文社古典新訳(小尾訳)でどちらが新潮(大久保訳)か?

そして、私は結局どちらの版を読むことにしたか?

答えは下巻レビューにて?!

               (2016年04月25日 本が好き!投稿