かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『仮面の陰に あるいは女の力 』

 

 英国の名家コヴェントリー家にやってきたのは、
質素な黒い服に身を包んだ青白い顔をしたガヴァネス(家庭教師)。
ジーン・ミュアと名乗るその女性は、
19歳にしてはあまりにも苦労の跡がうかがえた。

迎えた一同の哀れみをかってはいても、
当の本人は凜としていて、
芯の強さと音楽の才を持ち合わせているようだった。

ミス・ミュアはたちまち
教え子となるコヴェントリー家の末娘ベラと
その母親の女主人に加え、
ベラの次兄エドワード(ネッド)の心をもつかむが、
長兄のジェラルドと彼の恋人らしいいとこのルシアは
懐疑的だった。

けれども単調で退屈だった家に
明るく楽しい憩いの時間が訪れるようになり、
そうした変化を目の当たりにしたジェラルドもやがて
ミス・ミュアに惹かれていくのだった。


若草物語』の作者ルイザ・メイ・オルコットが、
A. M. バーナードという男性作家の名前で執筆した
スリラーだと聞いて手に取ってみたのだが、
なにこれ、面白い!
面白すぎてやめられない!!
やめられない止まらないで一気読み!

“19世紀米国大衆<スリラー>小説”と銘打たれているけれど、
スリラーというより、ロマンティックサスペンスという感じ!?

しかも主人公の名前がジーン・ミュア、
そのミュアに熱を上げる若者の名前がネッドだというところからはじまって
シャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』の
オマージュにもなっているという!!

物語をたっぷり楽しんだ後は
なぜオルコットがなぜ、男性名義で、
こういった「扇情的な小説」を書いたのかという解説つき。

この1冊で、2度、3度と楽しめる本だった。