かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『うたうおばけ』

 

 はじめて“うたうおばけ”と出会ったのは、
書肆侃侃房の「web侃づめ」(外部リンク)の連載を通じてだった。

本当ならここは、
“はじめてくどうれいんさんの著作に触れたのは”
とでも書くべきなのだろうが、
その連載に添えられた“うたうおばけ”の写真が
妙に印象的で著者の名前よりもおばけの名前で
脳内インプットされてしまった感がある。

その「web侃づめ」での人気連載に大幅増補した全39編のエッセイ集と聞いては
手を伸ばさないわけにはいかなかった。

ウェブ連載は書籍化されると無料公開が終了するということがよくあることが、
書肆侃侃房が太っ腹なのか、よほど自信があるのか
「web侃づめ」の連載は今も試し読み分として公開されているので
ぜひぜひちょっと覗いてみて欲しい。
『うたうおばけ』試し読み(外部リンク)


人生はドラマではないが、シーンは急に来るを合い言葉に、
「ともだち」についてのエピソードや、恋愛のことや地元盛岡のことなどが
描かれているエッセイを読んでいるとときどき、
あまりの面白さに
(いやこれ本当に実話?短編小説じゃないの?)などと
思ってしまうこともある。

実際、著者自身も連載時からよくそう聞かれるていたようで
そうした質問には
“自分の身の回りで特別おかしく楽しいことが起きているのではなく、
『はっ』として気にとめる目さえ持っていれば、
誰にでも起きるようなことを書いているつもり”と、応えているという。

いやしかし、こんなユニークな「ともだち」に囲まれていたら、
私なら身が持たないなと思ったり、
歌人はやっぱり、目の付けどころ、ことばの選び方が違うんだなと、
しきりに感心したりしながら読み進める。

その“感性”はもちろん、
なにより“若さ”がまぶしいが、
まぶしくて目をそらしたくなるというよりは、
若返りエッセンスをお裾分けしてくれるようなエッセイ集なのだ。

そういえば、学生時代、
付き合っていた彼は、岩手出身だったな…なんて、
どうでもいいことを思い出して、
なぜだかひとり赤面した。