かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『骸骨』

 

 この装丁だし、てっきりおどろおどろしく怖い話が沢山詰まっているに違いないと思い込んでいて、(寝る前には読めそうにないけれど、さていつ読もうか?)などと考えていたのだけれど、いざ読みはじめてみると、そういう心配は全く必要なかった。

中にはもちろん、ゾクッとするような話もあるのだが、収録されている17篇それぞれが全く違った味わいなので、ベッドの中で怖くなったらもう一篇、他の作品を読めば解決!


巻頭作「食後の夜話」は、いかにも『ボートの三人男』の著者らしい、人を煙に巻く持って回ったような言い回しで、読者を翻弄。

この調子でずっといくのかな?と思ったら、2作目の「ダンスのお相手」は、ガラッと雰囲気が変わって、腕のいい機械じかけの職人が作った作品の話。

3作目が表題作「骸骨」だったので、これはきっと怖いぞ!と肩に力を入れて読み始めたのだが……。
読了後は、ブランデーを1杯どうぞ。

という具合、作品毎にいろんな味が楽しめる。


「ディック・ダンカーマンの猫」の“主役”である緑の目をした猫も気になるし、古き伝説調の「海の都」もいい味を出している。
ロマンティックコメディ風の「チャールズとミヴァンウェイの話」も面白かった。

ゾクゾクする話を読んだあとに味わう「四階にきた男」には不思議と癒やされる気がするし、昔話風の「奏でのフィドル」では、予想外の展開が待っていた。

そしてなんといっても、私のイチオシは、ラストを飾る「ブルターニュのマルヴィーナ」!
かつて行き過ぎた悪戯が原因で追放された妖精が、現代に蘇り英国にやってくるこのファンタジーがもう素晴らしい!


ユーモラスな語り口の怪談あり、由緒正しい正統派の怪奇小説あり、奇跡譚あり、恋愛譚あり、SFもあって、妖精譚もある、この1冊でいろんな味が味わえて、一気に読むのはもったいないが、一気に読んでも飽きがこないので、ページをめくる手が止められない!そんな短篇集。

まさか「骸骨」を読んで、心洗われ癒やされる日が来ようとは、思ってもみなかった!?