かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『最後のオオカミ』

 

インフルエンザをこじらせて肺炎になったマイケル・マクロードは、かかりつけの医者でもある親友から、この病気は厄介だから大人しく寝ているようにときつく言い渡され、何週間もアパートに引きこもることになった。

きっと退屈でたまらないだろうからこの機会にと、孫娘のミヤが自ら指導をかってでたパソコンの練習に、最初はしぶしぶながら取り組んでいたマイケル老だったが、次第にその面白さに目覚め、インターネットで自分のルーツを調べてみること。

何代にもわたって現在マイケルやミヤが住んでいるイギリスのサフォーク州で暮らしてきた母方の家系は容易にたどることが出来たが、スコットランド人である父方の方は、わずか2、3代前をたどるだけで躓いてしまう。

ミヤのアイデアでインターネットの家系サイトにこれまでの調査結果を公開したところ、アメリカに住むマリアン・マクロードという女性からメールが届く。

どうやらこのマリアンとマイケルとは遠い親戚にあたるらしい。
同じように自分のルーツをたどっていたマリアンから、二人の遠い祖先にあたるロビー・マクロードが書き残したものではないかと思われる遺言書を見せて貰うことに。

そこに書かれていたのは、ひとりの少年と過酷な運命と、ともに戦争の時代を生き抜いた人とオオカミの子どもの物語だった。


イギリスの作家マイケル・モーパーゴが、アンリ・ゴーティエ=ブジェスカ(Henri Gaudier-Brzeska)の描いた絵画『狼(A Wolf)』(テート美術館所蔵)の絵からヒントを得て書いたという児童文学。

短い物語の中に少年の成長だけでなく、1700年代のスコットランド独立運動や、アメリカ「開拓」の歴史なども盛り込まれた読み応えのある作品だ。