かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『お話きかせてクリストフ』

 

中央アフリカルワンダから両親とともにイギリスにやってきたクリストフは
転校先の学校になかなかなじめそうになかった。

英語は話せるが、学校に行くこと自体も二年ぶりでとまどうことも多く、
いじめっ子たちからいじめを受けもした。

ある日、嫌がらせに耐えかねたクリストフは
いじめっ子のリーダー格の少年を殴ってしまう。

それをきっかけに、先生はいじめに気づいたし、
周りの子どもたちからも一目置かれて、
集団に受け入れられもする。

クリストフから学校でのできごとを聞いたお父さんが悲しそうに言う。
どこでも同じなんだな!
この国では、肌の色がちがうからっていじめられる。
ルワンダでは、ツチ族だから、フツ族だからと言って、いがみ合う。
宗教のちがいが争いのもとになる国もある。


戦うか逃げるかだ。でも、逃げないと、命を落とすことにもなる!
そう語るお父さんの言葉の意味が読者にわかるのはもう少し先、
クリストフがようやく学校に馴染んで、
自分のお腹に銃弾によるやけどの跡が残ったわけを
クラスメートたちに語って聞かせる場面でのことだ。

おばあちゃんから口伝えにお話を聞いて育ったクリストフが
友だちもでき、英語の授業にも慣れてきた学校生活で
最後まで馴染むことが出来なかった「物語を読む」という行為、
身ぶり手振りを使って語るべき物語を本に押し込めてしまうことに対する抵抗を
クリストフがどう乗り越えていくのかも読みどころの一つ。

難民問題を正面から扱う児童文学。
いじめのこと、口承文学のこと、文字で記録すること、
本を読むということなど、様々な切り口からあれこれと考えるきっかけにもなりそう。

小学校中学年には難しいのでは…という声もあるようだが、
子どもは、大人が思うよりずっといろいろなことを吸収できる
どの子もその子なりに、受け止めるものがあるはず。
私だってこの歳になっても、読んだその時はよくわからなくても、
後からハッと気づくこともあるし。

子どもも大人もまずはクリストフの話に
耳を傾けて欲しいところだ。