かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『僕とおばあさんとイリコとイラリオン』

 

きっかけは
ロシア、ポーランドハンガリーチェコルーマニアセルビアグルジア、イラン、インド、フランス、アメリカ、イギリス、アイルランド、ドイツ、イタリア、スイス、スペイン、チリ、アゼルバイジャン。未知谷より刊行した海外文学はこちらです
という出版社の未知谷さんのツイートだった。

中でもこの『僕とおばあさんとイリコとイラリオン』は、一風変わったタイトルと、おそらくグルジア語から直接日本語に訳された最初の文学作品だと紹介されていた点でも目を引いた。

それでさっそく、図書館から借りだして読んでみたのだが………これがもう、ものすごくすばらしくて、あまりにも好きすぎて、この魅力を伝えることができるレビューなど書けやしないと思うぐらい好きになってしまい、ずっと手元に置いておきたくなって即購入することにした。

巻末の訳者解説によれば著者の自伝的要素の強いというこの小説は、1940年代、グルジア西部のグリア地方の村からはじまる物語で、主人公のズラブ少年は口やかましいおばあさんと愛犬のムラダと共に暮らしていた。
近所にはイリコとイラリオンという、ウオッカをあおっては喧嘩ばかりしているおじさんたちがいて、この二人のおじさんが年中騒動の元になる。
ズラブ自身も悪たれ小僧で、イリコやイラリオンの企みの片棒を担いで、いたずらをしたり、泥棒の手引きをしたりもする。子どものくせに煙草も酒もなんでもこいだ。

ところどころに戦争の影や、体制の締め付けが見えかくれはするが、物語のトーンはあくまでものどかで愉快でやさしく温かい。
それは、ズラブが首都のトビリシの大学で学ぶため、村をあとにした後でも変わらない。

この物語を読んで、ズラブをおばあさんをイリコをイラリオンを、愛おしく思わない人がいるだろうか?
犬のムラダや下宿先のマルタおばさんを愛さない人がいるだろうか?
グルジアの田舎の村に郷愁を感じない人がいるだろうか?

懐かしい人々に会いに行きたい。
とりわけ、いつも怒ってばかりいる口の悪いおばあさんに。
両親のいない孫息子に惜しみない愛情を注ぎ続けるあのオルガおばあさんに、今すぐ会いに行きたくてたまらない。

              (2016年10月03日本が好き!投稿/一部変更あり