かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『クリスマスを救った女の子』

 

もちろん、魔法の力に満ちたオーロラの中を進んだとしても、サンタクロース……つまりファーザー・クリスマスになったニコラスが、エルフたちがせっせと作ったおもちゃがぎっしり詰まった底なしふくろをかつぎ、トナカイたちがひくそりに乗って空を駆け巡り、一晩のうちに世界中の子どもたちにプレゼントを配り終えるためには、強力な魔法が必要なことはいうまでもない。

今でこそ、クリスマス恒例となったこのイベントも、最初から順調だったわけではない。
ニコラスが、はじめて人間界の子どもたちにクリスマス・プレゼントを配ってから1年後、再び夜空に飛び立とうと準備していたまさにそのとき、エルフの町は大惨事に見舞われ、その年の贈り物は断念せざるを得なかった。

前の年、一番最初にサンタクロースを信じ、ニコラスを導いた少女アメリアは、その年もまた懸命にクリスマスの願いごとをしていたが、アメリアの元にニコラスが来ることはなかったのだ。

それから1年の間にアメリアをおそったあれこれといったら、本当にひどいものだった。

そしてまた1年が巡り、再びクリスマスがやってきた。
たっぷりのプレゼント、新調した真っ赤な服、沢山の新機能を備えた真新しいそり、ニコラスの準備は万端だったが、肝心のものが足りなかった。

それは魔法の力を強める“希望”だった。

原題は“The Girl Who Saved Christmas”
前作 『クリスマスとよばれた男の子』の続編だ。

次から次へと事件が起きるし、エルフにピクシー、トロルに、いい人間に悪い人間、はてはディケンズヴィクトリア女王まで登場するまさにクリスマスにふさわしい賑やかな物語。

前作同様、ちょっぴり不気味ではあるがユーモアたっぷりのふんだんな挿絵とともにやまねこ翻訳クラブの杉本詠美さんによる読みやすくリズムカルな文体が楽しい1冊だった。

                 (2017年12月25日 本が好き!投稿