かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『夜な夜な天使は舞い降りる (はじめて出逢う世界のおはなし チェコ編)』

プラハバロック様式の教会に
夜な夜な集まってくるのは
人間を見守ってくれている守護天使たち。

教区司祭が聖具室で身体を温めようとミサ用のワインの在庫を少し失敬しているころ、
天使たちはそれぞれが見守っている人々のことを話している。

自分の担当する人間がぐっすり眠っているその時間だけ、
彼らは持ち場を離れて、
自分たちの経験を語り合い、情報交換をしているというのだ。

こういう話は人間が聞いてもまたためになる。
だって考えてみて欲しい。
あなたに愛を注ぎ、
一瞬たりともあなたのことを忘れることなく
常にあなたにとって何が一番いいかを考えてくれる
そんな存在に想いをめぐらせば、
心に安らぎを覚えずにはいられないではないか。

この本は、幸運にもそうした天使たちの話を
こっそり聞くことができた人物が
幸せのお裾分けとばかりに
読者にその中味を語ってくれるという趣向の本だ。

サッカー選手と共にピッチにたった守護天使
宇宙飛行士と共に宇宙にいった守護天使
「あるじ」である人間と見つめ合った守護天使
「あるじ」を裏切った守護天使
「あるじ」に恋をしてしまった守護天使

「むかしむかしあるところで」と始める代わりに、
プラハのあるバロック様式の教会では…」といった風に
語り始められる物語たちは、
1つ1つの話が完結しているのでどこから読んでもよく、
寝る前に一つ二つ、読んでみるのにも良い感じ。

チェコ文学”と聞いたとき、
思わず思い浮かべてしまうような
カフカや フラバルミハル・アイヴァスのような
不条理や難解さはなりを潜め
わかりやすさとすっきりとした後味の連作だ。

もっともカトリックの教義をすれば
この本で描かれているような“守護天使”はありえなさそうだから
そこがまた“チェコ的”といえば言えるのかもしれないが……。

               (2018年11月12日 本が好き!投稿