かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『アリスとふたりのおかしな冒険』

 

物語は11歳の少女アリスと、売れない俳優のパパ、バーニーとパパのお姉さんで画家のペイシェンスおばさんの三人が、住みなれた<さくらんぼ屋敷>を引き払う場面から始まる。

どうやら、4年前、アリスのママが病気で亡くなって以来、一家には定期的な収入がなく、代々受け継いできたこの<さくらんぼ屋敷>を手放さざるを得なくなったらしい。

もちろん、アリスはこの引っ越しに反対だったが、彼女はそんな自分の気持ちを決して口にはしなかった。というか、もともとアリスはたいして口をきかないのだ。
とはいえ、自分の気持ちをかくすことは、おそろしくへたではあったのだけれど。

チェーホフの 『桜の園』を彷彿させる冒頭のシーンの中で、アリスがひきこもりがちで、物語を読んだり書いたりしてばかりの女の子であることが紹介される。
そしてそんなアリスのことを心配するペイシェンスおばさんが、アリスには、書くことと同じぐらい自分の人生を生きることを楽しんで貰いたいと強く願っていることも。


そんなこんなでたったひとり、アリスはスコットランドの寄宿学校に行くために、列車に乗り込むことになったのだった。

列車の中で知り合ったのは、人前で兄たちからからかわれ、長身を縮めてあせる生真面目な男の子ジェシー
良い友だちになれるかも…と思ったのに、学校に着いたとたんに裏切られて印象は最悪!?

お城を改修したその学校には、奇妙な規則がたくさんで、変わった先生もいっぱい!? 

どことなく“ハリー・ポッター”を連想させるあれこれに、アリスも読者も思わずニヤリ。

学校生活にも次第に慣れて、いたずら好きの天才少年ファーガスと仲よくなったアリスは、めんどうを起こしながらも楽しい日々を過ごすようになる。

ところがある日、音信不通だったパパからおかしな手紙と小包が届いたことがきっかけで、ファーガスとジェシーを巻き込んで、大冒険に繰り出すことになるのだった。

友情、冒険、ミステリ…。
児童書だからとあなどれないシリアスな展開に、スコットランドの豊かな自然と、本好きが喜ぶネタが見え隠れするしかけも加わって、読み応えもたっぷり。

佐竹美保さんの挿絵も豊富なお薦めの1冊だ。