作家柚木麻子さんの母校でもあるという恵泉女学園の創立者・河井道を中心に据え、その教え子で、親友でもあった一色(渡辺)ゆりと二人三脚、手を携えて女子学校教育に全力を注いだ様を描いたこの作品。
明治、大正、昭和と激動の時代をまたにかけての女子学校教育の黎明期が舞台というだけあって、三部構成の大作だ。
読み応えはありそうだが、固そうなテーマだし、読み切れるかしらと思いながら、図書館から借りてきたのだけれど、いやはやこれは!大当たり!
あまりの面白さに、第一部を読んだ時点でもう、手元に置いておきたくなって、購入することを決意した。
伊勢神宮の神職の娘として生を受けた道が函館に移り住み、キリスト教と出会い、新渡戸稲造の愛弟子となったことが縁で、アメリカに留学し……と、ストーリーをかいつまんで説明したところで、この面白さは全く伝わらないと思うので、ココは趣向を変えて、どんな方にお薦めかに、ポイントを絞って紹介してみよう。
まずは直球で、近代日本の女子教育、婦人参政権、女性の地位向上、シスターフッド…こうした言葉に興味を惹かれるあなたに。
エンタメ好きのあなたなら、新渡戸稲造、津田梅子、大山捨松、徳冨蘆花に、有島武郎、野口英世に平塚らいてう、山川菊栄、広岡浅子、市川房枝、柳原白蓮、村岡花子等々、続々登場する同時代の有名人たちに思わずワクワクしてしまうはず!?
文学好きのあなたはもしや、徳冨蘆花の『不如帰』や、有島武郎の『或る女』を読んでもやもやしたものを感じたことがありませんか?この機会に胸のつかえを取り除きましょう!
(等といいつつ、実はこの本を読んだ後、自分の『不如帰』レビューを読み返して恥じ入ったりもしたのだけれど…それはさておき)
世田谷経堂界隈に馴染みのある方にも!
万人受けはしないかもしれないけれど、その媚びないところがまたいいんだな、これが!
とにかくこの本、元気が貰えて、気分は晴れやか!加えてめちゃくちゃ面白い!
小説を読んでこんな気持ちになったのは久しぶりかも!
この本の登場人物や話題に上る小説をあれこれ読み合う読書会なんかも面白そうだ。
らんたんに灯ったあかりを引き継いでいきたいと思ってくださる若い方々にも、この面白さが届きますように!