むかし むかし、ひとりの おじいさんが、なにかおいしいものがたべたくなって、おばあさんに いいました。
「ばあさんや、ひとつ、おだんごぱんを つくってくれないか」
すると、おばあさんが いいました。
「でも、なんで こしらえるんですかね。うちにゃ、こむぎこが ありませんよ」
「あるとも、あるとも。こなばこを ごしごし ひっかいて、こなを あつめりゃ、どっさりあるさ」
こんな書き出しではじまるこの本は、1966年に瀬田貞二さんの訳と脇田和さんの絵で出版されたロシアの物語です。
おなかをすかせたおじいさんのために、おばあさんはなけなしの小麦粉でおだんごぱんを焼きます。
焼き上がったおだんごぱんは、冷ますために窓辺におかれるのですが、そこからころころ転がって、家の外に飛び出してしまうのです。
途中で出会ったウサギやオオカミ、クマに食べられそうになるものの、そのたびにぼくは、てんかの おだんごぱん。ぼくは、こなばこ ごしごし かいて、あつめて とって…
と歌を歌ってうまいことにげだすことに成功します。
ところが、調子の良いキツネの口車にのってしまって…。
原題はКолобок
ロシアの民話が元になったとても有名な話なので、日本でもこの福音館の他に文と絵をマーシャ・ブラウンが描いた『パンはころころ―ロシアのものがたり』 などもあります。
ちなみにこの「おだんごぱん」、ロシアではどんなパンなのか?とググってみるとどうやら「サワークリームブレッド」のことのよう、瀬田さん、さすがのネーミングです。
同じような民話はヨーロッパ各地に伝わっていて、ポーランドではポンチキが、セルビアやクロアチアではクラフネが、ノルウェーではパンケーキが転がるそうです。
丸い形のにっこり顔は、各国共通。
スマイリーマークのモデルと聞いて納得です。