かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『ほんやく日和 vol.3』

 

関西圏で活動する翻訳者が集まって結成された『同人倶楽部 ほんやく日和』による同人誌の第3弾。

 

これまで同様、19世紀~20世紀にかけて活動していた女性作家の短編を集めた翻訳アンソロジーだ。

 

巻頭を飾るのは、安心安定の面白さ、やまもとみきさん翻訳のイーディス・ブラウン・カークウッド文&M・T・ロス絵『動物の子ども図鑑 その三』
今回のお気に入りはアルパカのお嬢さん♪
マンドリルってどんな子だっけ?となどと調べてみるのもお約束だ。

 

続いて登場するのもやまもとみきさんの翻訳で、ローラ・E・リチャーズの『ジョニーの砂場』
てっきり子どもたちのお話かと思いきや、ジョニー少年の砂場で戯れるのはなんと5匹の猫!

 

「いやちょっとそれはないでしょ!」と主役を相手に膝詰めで説教したくてイライラしたのは、小谷祐子さん翻訳のメイ・バイロン『知りたがりやのロビンの冒険』
落としどころはまずまずで、これってもしや、男親の方が親としての自覚を持つのが遅いとかいう話だったのかも!?

 

モンゴメリー『キャロラインおばさんのドレス』は、早くに両親を亡くした貧しい姉妹の物語。
岡本明子さんは前回、前々回もモンゴメリーの作品を訳されていたけれど、回を増す毎に私にもだんだんその魅力がわかるようになってきた気が。

 

ドーラ・シガーソン・ショーター作『転生』は井上舞さんの翻訳。
こういう作品はいったいどこから見つけてくるのか?と思うぐらいゾクゾクする。
夢オチ?夢オチだよね?と願うような気持ちで読み続けると……。
いや~!!これ、めちゃめちゃ怖かった!!

 

まえだようこさんが訳すのはイーディス・ウォートン作『ミス・メアリ・パスク』
これもまたホラーなの!?
怖いの苦手なのよねえ!といいながら、指の隙間からのぞき込むも、次第に前のめりに!?
気がつけば食い入るように読み進め……ところがどっこい!まさかのオチで!!
えーこれはこれでやっぱり怖い。
しかしブルターニュ東尋坊って!?作者作品解説も油断ならない。

 

トリは朝賀雅子さんの翻訳でアンナ・キャサリン・グリーン作『忘れられない夜』
謎は謎のまま!?いいのかそれで!?
でもこういうの嫌いじゃない。
背景にはいったいなにがあったのか、いろいろ想像してしまう。

 

「ほんやく日和」3冊目。
すっかりお馴染みになった面々による翻訳で、全部で7作が収録された短篇集だが、3冊続けて読んでも飽きがきそうにないぐらいバラエティに富んでいる。
そしてもし3冊続けて読んだなら、訳者の腕がぐんぐんあがっていることが、実感できるに違いない。