高校時代にドストエフスキーに熱中し、ソローキンをテーマに学位論文を書いたという1984年生まれの著者が、博士論文を基にその後の研究成果も踏まえて大幅に加筆修正して書き上げたいう本書は、2021年度日本ロシア文学会賞受賞作。
松下隆志さんといえば、ソローキンの『青い脂』や氷三部作の翻訳者だけれど、こんなにお若い方だったのか!とまずは驚く。
ソ連崩壊後のロシアで多様化した文化や文学を、《ポストモダニズム》を軸に据えて読み解く試み。
『亡命ロシア料理』のゲニスが論じる「キャベツ・パラダイム」と「タマネギ・パラダイム」!なにそれ美味しいの!?
“空虚”で読み解く世相と文学!?
ペレーヴィンの『宇宙飛行士オモン・ラー』論に膝を打つも、ああ残念!『チャパーエフと空虚』はまだ読んでいないんだよなあ。
うわーこのプリレービンって、この間『ヌマヌマ: はまったら抜けだせない現代ロシア小説傑作選』で読んだ「おばあさん、スズメバチ、スイカ」の作者じゃない!?
まさかこういう人だったとは!!
などと最初のうちははしゃいでいたが、だんだんと寡黙になり、あれも読まなきゃ、これは翻訳ないのかしら?と、メモをとる。
いやはや、これは恐れ入りました。
というか、これまで「ロシア文学好き」を公言してはばからなかった私の頭の中は、19世紀~20世紀で時がとまっているようなもの。
がんばっても、ソルジェニーツィンやペレーヴィン、リュドミラ・ウリツカヤぐらいまでが精一杯という感じ。
それでも「ロシアのナショナリズムを文学表現から検証する」という試みについては、考えさせられることが多かった。