かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『なにかが首のまわりに』

 

短篇「なにかが首のまわりに」が「アメリカにいる、きみ」の改題だということは
以前読んだ短篇集 『アメリカにいる、きみ』の巻末に収録されている
訳者あとがきで紹介されていたから
この本はてっきり単行本『アメリカにいる、きみ』を
文庫化したものだと思い込んでいて、
是非とも手元に置いておきたいと購入したのだけれど
読んでみるとそうではなく、2009年に出版された原著短篇集の翻訳版だった。

収録されているのは
●「なにかが首のまわりに」(「アメリカにいる、きみ」の改題)
●「アメリカ大使館」
●「ひそやかな経験」(「スカーフ」の改題)
●「ゴースト」
●「結婚の世話人」(「新しい夫」の改題)
●「イミテーション」
○「明日は遠すぎて」
○「震え」
○「先週の月曜日に」
○「ジャンピング・モンキー・ヒル
○「セル・ワン」
○「がんこな歴史家」
の12篇。
●をつけた作品は既刊翻訳短篇集『アメリカにいる、きみ』(2007年)に
○をつけたのは同じく既刊翻訳短篇集『明日は遠すぎて』(2012年)に
収録されていた作品だ。

どうしてこのような形で出版されることになったのかという経緯については
本書巻末に収録されている訳者あとがきにくわしいが、
そもそも日本にはじめてアディーチェを紹介するにあたって
日本の読者が手に取りやすい短篇集にすることを思いつき
なおかつあのセレクトで
日本オリジナル短篇集『アメリカにいる、きみ』を編んだ
翻訳者&編集者のすごさにあらためて感じ入った。

とはいえ、収録作品のタイトルだけ見て

アメリカにいる、きみ』も『明日は遠すぎて』も読んでいるから
この本はもう読まなくてもいいや……などと思うのは早計だ。

アディーチェという作家は、自作に何度も手を入れるタイプのようで
それに合わせて翻訳も加筆修正されている。
この本に収録されている作品にも
一読しただけで以前読んだものとは明らかに違っている部分があるものがあったし、
ひととおり読み終えた後
アメリカにいる、きみ』と共通する収録作品を読み比べてみもしたのだが、
なるほど、ここをこういう風に変えたのか、ここは削ったんだなと、
その修正の意図を想像するのもなかなか楽しかった。

こうして読み比べてみると
たった1行あるかないかだけでも随分印象が変わるのがよくわかり
作家も翻訳家も本当にひと言ひと言を選び抜いて物語を作っているんだと
あらためて感じ入った。

 

 

 

                 (2019年09月04日 本が好き!投稿