かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『黄色い雨』

 

これは小説なのだろか?
それとも詩?
それとも、「私」の追憶?


頭の中で何度も何度も繰り返される「過去」と「未来」
どこからが記憶でどこからが妄想か
今はもう、それを確かめるすべもない。
なぜなら「私」は
すべてが朽ちゆく村で
最後の一人となったのだから。


死に彩られた荒涼広漠とした風景
血も樹液も枯れてしまった人間と木々
忘却の黄色い雨
秋がきて、そして冬が来る


「私」は、何年も前から大切に
だた一発だけ残しておいた銃弾をついに使う
そうして「私」は、本当にひとりぼっちになるのだ。


元々は詩人だったというスペインの現代作家のこの作品は、
登場人物が魅力的なわけでも
波乱と冒険に満ちているわけでもなく
ただただ静かに陰鬱に
それでいて色彩豊かに
「私」の心と時の流れを著している。


ふと目にとまって、手にした本だが
ページをめくる度に衝撃が走り、
目を離すことが出来なくなった。


決して面白いわけではなく、
誰にでもお勧めできる本でもない。
言葉でうまく表現することすら出来ないが、
とにかくこれはすごい。


涙は出ない。
けれど……なんだろう?
なにかが心に響いて、
読み終えた後も余韻が去らない。

              (2012年01月11日 本が好き!投稿