かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『リャマサーレス短篇集』

 

短篇小説を読んでいると、(えっ?そこで終わり?)(それから?)と、置いてけぼりになって途方に暮れてしまうということがしばしばある。

中にはそこからあれこれ想像を巡らすのが楽しいという作品もありはするが、途方に暮れてしまうこともしばしばで。
そういうところからか、昔から短篇には苦手意識があった。

けれどもこの短篇集を読んでいると、そもそも物語というものは、その長さにかかわらず、誰かの人生切り取った断片からできているものなのではないかという気がしてくる。

幼子のいのちを救ってくれた名前もしらないゲリラの医師。
どこの誰か、なぜそんな活動に身をやつしているのか、その後どうなったのかも知らない相手。
周りからとがめられ、責め立てられるかもしれないと思うと恐ろしくて、長い間、口にしたことはなかったけれど、母は娘を救ってくれたその人のことを忘れたことがない。
「夜の医者」のように、『狼たちの月』を思い起こさせる、内戦をモチーフにした作品も多い。

 

狼たちの月

狼たちの月

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ダムの底に沈んだ町を思いながら死んでいったおじいちゃんの最後の願い。

数ヶ月間だけ臨時教員として赴任した周囲から隔絶されたような田舎の村で出会った人たち。
『黄色い雨』を思い出させる作品も。

 


あなたとわたし、わたしとこの本。
出会ったそのひとときが、私の人生の断片で、一つの物語でもあると感じられるのは、『無声映画のシーン』とも共通している。

 

 


そうかと思うと、「自滅的なドライバー」のように、(えー!ちょっと待って!ダメだよ!まずいよ!見てられないよ!)とハラハラしすぎて、思わず目を覆いたくなるような作品や、〆切が迫るのに原稿が書けない作家の苦悩を描く作品も。

全部で21篇。
次々と一気に読むよりも、少しずつ、ゆっくり味わいながら読むのがお勧めの短篇集だ。