かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『列車探偵ハル 王室列車の宝石どろぼうを追え!: 王室列車の宝石どろぼうを追え!』

 

ハヤカワ・ジュニア・ブックス(HJB)は、小・中学生のためのミステリ、SF、ファンタジー、ノンフィクションを刊行するレーベル。

そうではあるけれども、小・中学生にだけ読ませておくのはもったいない面白さだという評判を耳にした。

であるならば……と、まずは試しに、ここはやっぱり、やまねこ本か。

というわけで、タイトルや装丁から想像するにこの本は、乗り鉄だか撮り鉄だか知らないが、列車大好き少年が、持ち前の大人顔負けのオタク的知識をフル動員して、難事件を解決する……という話だとあたりをつけつつ手に取ってみた。

ところが、私の推理は初っぱなから大ハズレ!?

主人公である11歳のハル少年は、王室列車などというものに全く興味がないどころか、そもそも旅に出たくなんかこれっぽっちもなかったのだ。

にもかかわらず、列車に乗り込んだのは、お母さんが出産間近だったから!
お母さんは入院、お父さんはそのつきそい。
そこでお母さんのお兄さんであるナットおじさんが、ハルを列車の旅に連れ出してくれたのだった。
ハルとしては退屈そうな列車の旅より、お父さんと一緒にお母さんのそばにいて、助けてあげたいと思っていたのだったけれど…。

おじさんとは特別親しいわけでもないし、古い列車にはコンセントもなく、ゲーム機の充電もできやしない。

おじさんが旅行作家なのは知っていたが、その作品は読んだこともなく、以前にこのハイランド・ファルコン号のことを書いたことがあったから、引退するこの王室列車の最後の旅に招待されたのだということも、乗り込んでから知ったというぐらい、ハル少年のテンションは低かった。

列車には途中から王子と王子妃も乗り込んでくる予定で、同じ列車の乗客たちも、貴族や有名な女優や富豪といった大人のセレブ達ばかり。

ところが、その列車の中で高価な宝石がなくなってしまう。
犯人はもしや、最近新聞を賑わしている宝石どろぼうではなかろうか!?
だとしたら、犯人を捕まえたら、懸賞金がもらえるかも!?

そんなこんなでハル少年、列車の中で知りあった、正真正銘機関車オタクの女の子・レニーと共に、大人たちに内緒で、豪華列車で大捜索を繰り広げることに。

だがしかし、犯人は見つからず、ついには王室に伝わる大切なお宝までもが!?

果たして、ハルとレニーは、犯人を捕まえることができるのか。

すれた読者にとっては、ミスリードはわかりやすく、犯人の見当も早々につきはするが、そこはそれ、物語の面白さはそこだけにあるのではないから問題なし!

気がつけば、列車には全く興味が無かったハルも、すっかり機関車ファンに。

そして読者である私も、本とカメラを両手に抱え、列車の旅もいいかもなあ~などと、夢を見始めているのだった。