かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『やりなおし世界文学』

 

芥川賞作家が語る世界文学と聞いてまず思い浮かべるのは、池澤夏樹さんの 『世界文学をよみほどく』
作者紹介や小説のあらすじに加え、作品の時代背景や文学史上の位置などにも言及するような、教養(うんちく)系の内容を想像しながら、手に取ったこの本は、良い意味で予想をうらぎってくれた。

作家津村記久子さんが語るのは、古今東西94作もの文学作品。

冒頭は「ギャツビーって誰?」と首をかしげつつ、今さら聞けない『華麗なるギャツビー』。

気晴らしにかもめの刺繍をするほどかもめ好きなのに、読んでいないのもなんだかなあと、手にとったのはチェーホフの『かもめ』。
だがカバー裏のあらすじに“恋だらけの物語”とあってたじろぐ。

『ドリアン・グレイの肖像』を読みながら取ったメモには、11回も、「頭からっぽやな」と書いていた!?

表紙がいきなりしりを蹴られている人としりを蹴っている人なので、なんだこりゃと思うのだが、読んでみるとまったく偽りはないことがわかる。
カンディード』の紹介はこんな風に始まっている。

太宰治賞出身であるにもかかわらず、太宰治が苦手だという津村さん。
文章はすごくおもしろくて好きなのだけれど、本人がかなり苦手なのだそうだ。
その理由はものすごくもてたから!?
そんな津村さんはあの『津軽』をどう読んだか。

うんちくはなし。
「今さらだけど読んでみた」「ひさびさに手に取った」
気負わず、気取らず、知ったかぶらず、読んでみたらこんな話だった。こんな風に感じた。これってもしかすると○×なのでは…と、縦横無尽に語りあげる。

読んでいない本も面白そうではあるが、私自身が読んだことのある本についての語りがめちゃくちゃ面白い。
へえこんな風に読んだのか!そうそうそうなの!と思わず、ニヤニヤしてしまい、さらには本棚の奥からあの本この本を引っ張り出して……。
まさにいろいろやりなおしたくなる1冊だ。