かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

2022年9月の読書

9月の読書メーター
読んだ本の数:15
読んだページ数:3950
ナイス数:448

呑み込まれた男呑み込まれた男感想
奇才エドワード・ケアリーが描くもう一つの“ピノキオ”物語は、“生きる糧”についての物語でもある気がした。
読了日:09月29日 著者:エドワード・ケアリー
夜がうたた寝してる間に夜がうたた寝してる間に感想
「四角い窓に、夜を眠らせて閉じ込めた。」こんな書き出しで始まる物語の作者はきっとロマンチストだ。そしてその繊細な表現は青春小説によく似合う。
読了日:09月28日 著者:君嶋 彼方
世界の果て、彼女 (新しい韓国の文学)世界の果て、彼女 (新しい韓国の文学)感想
7つの作品が収録されている短編集。いつもながら、キム・ヨンス。語り口はやさしく詩的で、お気に入りのフレーズをいくつも抜き書きできそう。考えてみれば、自分自身のことだってよくわからないのに、なぜ他人の気持ちがわかったような気になったりするのだろう。相手のことをこうだと思いこんで、それ故にすれ違う。どうしていつも、そんなことを繰り返してしまうんだろう。頭の片隅でそんなことをぼんやりと考えながら、物語を読む。とてもせつなくて、読んでいると、なぜだか少しやさしくなれる気がする。
読了日:09月26日 著者:キム・ヨンス(金衍洙)
父さんのゾウ (文研ブックランド)父さんのゾウ (文研ブックランド)感想
また1冊、ずっと大切にしたい本に出会えた。
読了日:09月24日 著者: 
願望機願望機感想
表題作『願望機』は、アベエスィの作品Пикник на обочине(英訳版 Roadside Picnic/日本語版ストーカー)を元に作家達自らが脚本化した作品。タルコフスキイ監督が撮った映画『ストーカー』とはひと味もふた味も違うもうひとつの『ストーカー』が堪能できる。同時収録の『スプーン五杯の霊薬』も、シナリオ形式で書かれている物語。人間に不死を与えてくれる不思議な霊薬が、五人分だけあったなら……というお話。皮肉もユーモアもたっぷりで、なかなか楽しめる作品だった。
読了日:09月21日 著者:アルカージイ ストルガツキイ,ボリス ストルガツキイ
ストーカー (ハヤカワ文庫SF)ストーカー (ハヤカワ文庫SF)感想
『やりなおし世界文学』からの派生で、数年来Kindle沼の底に眠っていたこの本を取り出して読んでみたら、これがすごく好みの作品でなんだか得した気分になった。
読了日:09月19日 著者:アルカジイ ストルガツキイ,ボリス ストルガツキイ
ピノキオの冒険ピノキオの冒険感想
ディズニーアニメの影響かすっかり知っているつもりになっていたが、ちゃんと読んだことがなかったなあと思いつつ手にした本。イタリアのイラストレーターインノチェンティによる見応えのある絵をふんだんにもちいた大判の絵本だが、文章の方もしっかりと読みでがある物語になっていて、寝る前にさらっと読み聞かせ…というわけにはいかない。数章ずつゆっくり冒険を楽しむつもりで読むのがいいかも。それにしても、知っているつもりだったピノキオとは全然違っていて、いろいろびっくり。変わったのはピノキオだけじゃなかったのね。
読了日:09月17日 著者:カルロ コルローディ
男と女を生きた作家: ウィリアム・シャープとフィオナ・マクラウドの作品と生涯男と女を生きた作家: ウィリアム・シャープとフィオナ・マクラウドの作品と生涯感想
かつて女性の作家が男性名を用いて執筆した理由は想像に難くないが、男性のシャープがわざわざ女性名をつかって執筆したのはなぜだったのか、そのわけに興味があって読んで見た。シャープとマクラウドそれぞれの名前で発表された作品を具体的に分析しながら、作者の深層心理に迫る手法は興味深く、とりわけ、ユダヤ人やロマ、ケルトの民といった社会でマイノリティに位置づけられる人々に親近感をもち、そうした人々を高度な精神性や自然との親和力をもった存在として登場させるマクラウドの作品を丁寧に読み解いている点が面白かった。
読了日:09月17日 著者:有元志保
飛べないハトを見つけた日から (児童書)飛べないハトを見つけた日から (児童書)感想
飛べないハトを見つけた日から、目の前の世界がどんどん広がっていく、少年の成長を描いた児童文学。あとがきによれば、著者もかつて公園で怪我したハトを保護した経験があるのだとか。ハトと少年、少年と友だちの関係、見守る大人達の反応など、いい人が多くて気持ちよく読める。いじめっこたちの行く末が気になりはするけれど。
読了日:09月15日 著者:クリス・ダレーシー
引き出しに夕方をしまっておいた (セレクション韓・詩)引き出しに夕方をしまっておいた (セレクション韓・詩)感想
2013年に韓国で出版されたハン・ガン初の詩集。 60篇ほどの詩を、きむふなと斎藤真理子という稀代の翻訳家が共訳していて、 巻末に収録された訳者二人の対談も、 詩人と詩人が詠う世界を理解するために大いに役立つ。 そしてもう一つ、 これがクオンの書籍の大きな魅力の一つでもあるのだけれど、 巻末に掲載されたURLから、 5篇の詩の原語朗読を聴くことができる。 しかも今回の朗読者はなんと詩人本人! 原詩の調べも必聴だ。
読了日:09月13日 著者:ハン・ガン
アイダホ (エクス・リブリス)アイダホ (エクス・リブリス)感想
人の心の機微と共に、自然の厳しさと美しさをも静かに語り上げる物語は、2019年度国際ダブリン文学賞を受賞した著者長編デビュー作。「真相」もさることながら、記憶について、愛について、考えさせられる、一読、二読、三読の価値のある物語だった。
読了日:09月12日 著者:エミリー・ラスコヴィッチ
菜食主義者 (新しい韓国の文学 1)菜食主義者 (新しい韓国の文学 1)感想
3作品を収めた短編集だが、登場人物が共通しているので一つの長編としても読むことができる。“平凡”な専業主婦だったヨンヘは、ある日突然肉を食べなくなる。なんらかの主義主張や、宗教や、誰かの影響があってそうなったわけではないらしく、本人に問いただしても、自分が見た気味の悪い夢の話をするだけ。これが三つの物語に共通する前提だ。ヨンヘをめぐるあれこれを、三人の身近な人物の視点から描き出す物語は、それぞれがそれぞれ抱く思惑と、ヨンヘとの距離感の描き方が絶妙だった。
読了日:09月08日 著者:ハン・ガン
その丘が黄金ならばその丘が黄金ならば感想
なにがあれば家は家になるのだろうか。親を失ったきょうだい二人。それぞれがそれぞれの居場所を求めたつらく苦しい旅路の果てにたどり着く場所は……。現実と幻想がまざりあいながら展開する物語は、旅の物話であると同時に、家族の物語であり、開拓や移民の歴史ともに、人種差別やジェンダー問題をつきつけもする。時々挟み込まれる中国語の響きに いつの間にか息を凝らしていたことに気づかされて、思わず大きくため息をつく。またすごいものを読んでしまった。
読了日:09月06日 著者:C・パム・ジャン
黄金の壺/マドモワゼル・ド・スキュデリ (光文社古典新訳文庫)黄金の壺/マドモワゼル・ド・スキュデリ (光文社古典新訳文庫)感想
『やりなおし世界文学』からの派生読書。ドジっ子万年学生の主人公が“君の瞳に恋をした!?”『黄金の壺』いやいやこれ相手が犬や猫ならそういうこともあるだろう。もしかすると人でもありかも。ギリギリとかげでもいけるかも!?でも蛇は、私的には蛇はダメ!?『マドモアワル・ド・スキュデリ』は、その題材をルイ14世時代の犯罪事件と、パリの貴族社会のスキャンダルからとっただけでなく、当時の有名な女性作家マドレーヌ・ド・スキュデリを探偵役に据えたミステリー仕立ての物語。まちがいなく古典なのに極めて現代的な気も。
読了日:09月05日 著者:エルンスト・テオドール・アマデウス ホフマン
ベイルート961時間(とそれに伴う321皿の料理)ベイルート961時間(とそれに伴う321皿の料理)感想
細かい章立てで連想風に連なっていく文章を味わいながら、料理も言葉も人と人をつなぎ、人を介して広がっていくものなのだと改めて思う。
読了日:09月01日 著者:関口 涼子

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