かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『 エヴィーのひみつと消えた動物たち』

 

イギリスのロンドンに、エヴィー・トレンチという女の子がいた。
エヴィーは、ふつうの子じゃなかった。
とくべつな子だった。
エヴィーのパパがそう言っていたんだ。
とくべつな子だって。
エヴィーは、ふつうの子だったらよかったのに、とよく思った。でもやっぱりとくべつな子だった。

物語はこんな風に語り始められる。
動物が大好きで、いろいろな動物の生態にもとてもくわしい女の子。
それだけなら、さほどとくべつでもないかもしれない。
小さい頃にママを亡くして、パパとふたり暮らしだったから、パパにとってとくべつな子という意味かもしれない。

そんなことを考えながら読み進めると、だんだんエヴィーがとくべつなわけがわかってくる。
エヴィーは、動物の心の声をきくことができるのだ。
それだけじゃない。自分の心の声を動物にきかせることもできる。
口を動かすことも声を出すこともなく、動物と会話ができるんだ。
どうしてそんなことができるのかは、エヴィーにもわからなかったが、その力は大きくなるにつれて強まっているようだった。
ひみつの超能力。
だがパパは、だれにも言っちゃいけないという。
「とくべつだってことは、めんどうにまきこまれやすいってことでもある。」というのだ。

実際のところ、パパのいうとおりだった。
えさを楽しみに窓辺にやってくるスズメと話をしたり、通りがかった犬の足のとげを抜いてあげたりするぐらいならいいが、学校の廊下に置かれた狭いゲージに閉じ込められて、家族や仲間の待つ巣穴に戻りたがっているウサギになげき声や、友だちが飼っているマルチーズがきゅうくつな服を着せられるのをいやがってあげる声が聞こえれば、だまって知らんぷりはできない。
結局めんどうにまきこまれるのだ。

けれども、ほんとうのめんどうは、もっとずっと大きな、世界規模のやっかいごとだった。
エヴィーと同じような、そしてエヴィーよりも強力な力を持った男モーティマーが、自分の野望のために、エヴィーを狙っていたのだった!

訳者解説によれば、かつて息子の疑問に答えて『クリスマスとよばれた男の子』を執筆したマット・ヘイグは、今度は娘のリクエストに答えて「動物と、動物が大好きな女の子の話」を書いたのだとか。
その言葉どおり女の子も動物たちもいきいきと大活躍。

ハラハラどきどきするシーンの合間には、環境問題についてあれこれ考えさせられる大まじめな問いかけも。

ふつうじゃなくてもいい。
ああ!私も庭にやってくる小鳥たちや散歩の途中で会うリスたちと話ができたらなあ!
小姑猫に小言を言われるのは…ちょっと困るけれど……ね!?