かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『ダニー』

 

なにか事件が起きたらしいのだ。
その事件には、育児用に特化されたアンドロイドが関わっているよう。
このモデルに搭載されたAIのバージョンは4・65で、人間の感情の80%を感じて再現できるのだという。

アンドロイドの名前はダニー。
23歳で、がっしりとした手足と、子どもたちのに人気を独占できる才能と、永遠に老いることのない心臓を持っていた。

孫娘ミヌを育てる68歳の「私」も事情聴取をされた。
思い出すのは、はじめてダニーと公園であったときのこと、幼子を介したいくつかのエピソード、彼がかけてくれた言葉。

「私」の回想の合間をぬうように、刑事やアンドロイドの開発技術者らしいひとたちが、ダニーや関係者から聞き取っていると思われる「証言」が挟み込まれる。
「私」の耳にはとどかないそうした「証言」が、おぼろげながら読者の前に事件のあらましを浮かび上がらせる。

それはアンドロイドの「意思」なのか、バグなのか、はたまた所有者が意図したものか!?
だが関係者の証言から徐々に明らかになっていくのは、とてもせつない思いだった。

正直なところ読者である私には、それが「恋」と呼べるものなのかどうか、いまひとつわからなかったが、彼女がダニーに心惹かれた気持ちだけはわかる気がした。