1951年生まれの著者は、1970年から6年間、ソ連・モスクワ国立大学の文学部に留学した。
帰国後は、NHKのディレクターとしてソ連・ロシアのドキュメンタリーを40本以上制作したというから、おそらくは、タイトルや中身を紹介されれば、ああ、あの番組も、この番組も、この人が手がけたものだったのかと思う視聴者も多いに違いない。
そんな著者が今この時期にロシアに関する本を出す、というので、興味を持って読んでみた。いま、ロシア政府は急速にかつての大国、ソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)への回帰を目指そうとしているようにみえる。
と著者は言う。
ブレジネフ時代の留学経験、その後のペレストロイカ、ソ連崩壊、エリツィン期の大混乱、プーチンの登場などロシアの激変。
西はバルト三国から東はサハリンまで、様々な土地で様々な人々に出会いながら追ってきた取材経験、さらには放送局退職後にモスクワで暮らした5年間の経験を元に書かれた本書を読むと、ロシアの抱えるあれこれが少しわかってくる気がする。
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民主主義への懐疑
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そしてウクライナ…歴史のこと今のこと、
先日読み終えたばかりの『ぼくはソ連生まれ』で語られていたことを裏打ちするようなあれこれが、私にとってタイムリーだったということもあるが、戦況報道だけではわからないロシアの今と、世界のこれからを考える上でも、重要な視点が綴られているように思われた。