かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『私の源氏物語ノート』

 

勤め人時代、退職したら岩波書店新日本古典文学大系の『源氏物語』を手元にそろえ、『更級日記』の著者菅原孝標女のように時間にかまわず読みふけりたいと思っていたという著者は、出版社から若い読者向けの『源氏物語』を刊行しないかと声を掛けられたとき、アレンジするのではなく、できる限り原典に忠実に現代語訳をほどこし、途中帖を抜くことで長さを調節し読みやすくすることを自ら提案したのだという。

そうして生まれたのが『源氏物語 紫の結び』で、いわゆる紫上系の17帖に、「若菜」「柏木」「横笛」「鈴虫」「御法」「幻」「雲隠」を足して構成されているという。

これが好評だったのだろう。
その後残りの帖も『つる花の結び』『宇治の結び』として、足かけ5年をかけて全篇を翻訳刊行したのだそうだ。

本書は『源氏物語』を愛読し、現代語訳も手がけた著者による『源氏物語』をめぐる読書エッセイで、豆知識はもちろん、突っ込みや大胆な推論を含めた率直な感想で楽しませてくれる。

「玉鬘」はスピンオフ!
藤裏葉」の大団円のその後に!?

「そうそうそうだよね!」「えーでも、あの場面はさあ…」「そんな読み方もあったんだ!」などと、作家と共に『源氏物語』を読んで、一緒に楽しむべく綴られているエッセイ。
若い読者を想定してのことだろう、文章も平易で親しみやすく読みやすい。
読書会メンバーが語るあれこれに耳を傾ける様な気持ちで読み進めた。