かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

2022年6月の読書

6月の読書メーター読んだ本の数:23読んだページ数:6470ナイス数:542左川ちか全集の感想まずは通読。この先何度も戻ってくる本ではあろうが、とりあえず初読の感想を。印象深かったのは、都会にあって故郷を思う「冬の日記」。オルダス・ハクスリーの「イ…

『左川ちか全集』

左川ちか全集 作者:左川ちか 書肆侃侃房 Amazon 左川ちかは1911(明治44)年、北海道に生まれ。小樽の女子校に通っていた頃、兄の親友伊藤整と知りあう。学校を卒業後、兄を頼って上京し、貯金局に非常勤で勤めながら、詩人たちと交流。18歳で翻訳小…

『いずれすべては海の中に』

いずれすべては海の中に (竹書房文庫) 作者:サラ・ピンスカー 竹書房 Amazon タイトルと装丁に惹かれて手を伸ばしたSF短篇集。少し長めの中篇を含めて全部で13篇の作品が収録されている。文体も好みで、どれもこれも設定もなかなかいい感じなのだが、ラ…

『(033)月(百年文庫)』

(033)月 (百年文庫) 作者:ルナアル,リルケ,プラトーノフ ポプラ社 Amazon 1冊に3人の文豪の傑作を集めた、ポプラ社の短編シリーズ『百年文庫』。帯にひとすじの光が胸の底に射しこむときというキャッチフレーズが添えられているこの『月』篇の収録作品は、…

『月光色のチマ』

月光色のチマ (韓国文学の源流シリーズ) 作者:ハン・スンウォン 書肆侃侃房 Amazon 作者の韓勝源(ハン・スンウォン)は1939年生まれ。故郷の海辺に生きる人々の姿を中心に、土俗的な香りのある文体で描くことで知られ、現代文学賞、韓国文学作家賞、李…

『なにかが首のまわりに』

なにかが首のまわりに (河出文庫) 作者:アディーチェ,チママンダ・ンゴズィ 河出書房新社 Amazon 短篇「なにかが首のまわりに」が「アメリカにいる、きみ」の改題だということは以前読んだ短篇集 『アメリカにいる、きみ』の巻末に収録されている訳者あとが…

『アメリカにいる、きみ (Modern&Classic)』

アメリカにいる、きみ (Modern&Classic) 作者:C・N・アディーチェ 河出書房新社 Amazon はじめてアディーチェに出逢ったのはサイト献本でいただいた短篇集 『明日は遠すぎて』だった。 明日は遠すぎて 作者:チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 河出書房新社…

『中国女性SF作家アンソロジー-走る赤』

中国女性SF作家アンソロジー-走る赤 (単行本) 作者: 中央公論新社 Amazon 最初にお断りしておくが、私はSFにうとい。だから読んでいて「この作品には誰それの影響が」とか「これはきっとあの作品のオマージュ」などというようなことは全く思い浮かばない。…

『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』

男も女もみんなフェミニストでなきゃ 作者:チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 河出書房新社 Amazon 『アメリカーナ』をはじめ、これまで数作を読んだ経験から、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェの作品は全部読みたい!ただ読むだけではなくできうる限り…

『アメリカーナ』

アメリカーナ 作者:チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 河出書房新社 Amazon 『半分のぼった黄色い太陽』で1960年代のナイジェリアの戦乱の中で生きる人々を見事に描き出したチママンダ・ンゴズィ・アディーチェが挑んだ最新作は、現代物でありながら、…

『半分のぼった黄色い太陽』

半分のぼった黄色い太陽 作者:チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 河出書房新社 Amazon ナイジェリア出身の作家チママンダ・ンゴズィ・アディーチェが描いたこの長編小説が読み応え十分の文句なしに素晴らしい作品であることは、この本を読む前から知ってい…

『驟雨』

驟雨 (韓国文学の源流シリーズ) 作者:廉想渉 書肆侃侃房 Amazon 美しく趣きのある装丁と“韓国文学の源流”という言葉に惹かれて手にしたのは、“朝鮮自然主義文学の祖”とも言われる1897年生まれの作家、廉想渉(ヨム・サンソプ)の後期代表作。1952年…

『他者の苦痛へのまなざし』

他者の苦痛へのまなざし 作者:スーザン ソンタグ みすず書房 Amazon 原題は“Regarding the Pain of Others”。2003年2月にアメリカで出版され、同年7月に早くも日本語翻訳版が出版されたことでも話題になった本だった。とはいえ私がこの本を最後まで読…

『明日は遠すぎて』

明日は遠すぎて 作者:チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 河出書房新社 Amazon 献本に応募したのは、著者がナイジェリア出身だと知ったからだ。既に3冊目の邦訳本だというが、私はこれが初めての出会いだった。自分がよく知らない国を舞台に繰り広げられる…

『パープル・ハイビスカス』

パープル・ハイビスカス 作者:チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 河出書房新社 Amazon アディーチェのデビュー作がついに翻訳された。特別お気に入りの作品に巡り会ったあとに、その作家の昔の作品を読むと、ちょっと見劣りしてしまって…ということは、仕…

『スローターハウス5』

スローターハウス5 作者:カート ヴォネガットジュニア,伊藤 典夫 早川書房 Amazon 人生について知るべきことは、すべてフョードル・ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の中にある、と彼はいうのだった。そしてこうつけ加えた。「だけどもう、それだ…

『崩れゆく絆』

崩れゆく絆 (光文社古典新訳文庫) 作者:チヌア アチェベ 光文社 Amazon 舞台はアフリカ・ナイジェリア。ウムオファイア(森の人びと)と呼ばれる架空の村だ。オコンクウォは親から受け継ぐ財産がないどころか、幼いころから働いて家族を養わなくてはならなか…

『シェニヤル村の子どもたち』

シェニヤル村の子どもたち 作者:エヴァ・リーシナ 群像社 Amazon “わたしは1940年生まれなのに、あなたは1935年生まれでしょ。だからわたしの方が年上なのよ”マリネは大まじめです。だってそうでしょ?1935よりも1940の方が大きいに決まって…

『サイードから風が吹いてくると』

サイードから風が吹いてくると (Suzuki Yuriika Selection 1) 作者:鈴木ユリイカ 書肆侃侃房 Amazon 鈴木ユリイカは1941年生まれ。翻訳家でもあり、絵本作家でもある詩人で、2021年、本書で第39回日本現代詩人賞を受賞している。 サイードから風が…

『あの図書館の彼女たち』

あの図書館の彼女たち 作者:ジャネット・スケスリン・チャールズ 東京創元社 Amazon ナチス占領下にあったパリのアメリカ図書館の状況など、実在の人物や史実を下敷きにして語られるフィクション。物語の舞台は1939年~40年代のフランス・パリと198…

『すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集』

すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集 作者:ルシア・ベルリン 講談社 Amazon 真っ暗なのに光が見え、飾らない言葉に息遣いを感じさせるルシア・ベルリンの初邦訳作品集『掃除婦のための手引き書』。あまりにも素晴らしかったから、短篇集の第2弾…

『掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集 』

掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集 作者:ルシア・ベルリン 講談社 Amazon ルシア・ベルリンと初めて出会ったのは、2年前。早稲田文学増刊 女性号 に掲載されていた本書の表題作でもある「掃除婦のための手引き書」を読んだ時だ。これがもうす…

『失花 (韓国文学の源流 短編選3)』

失花 (韓国文学の源流 短編選3) 作者:李箱,李孝石,蔡萬植,金南天,李無影,池河蓮 書肆侃侃房 Amazon 書肆侃侃房の「韓国文学の源流 短編選」は、古典作品から現代まで、その時代を代表する短篇の名作をセレクトする全10巻刊行予定のシリーズ。第1弾として…