“わたしは1940年生まれなのに、あなたは1935年生まれでしょ。
だからわたしの方が年上なのよ”
マリネは大まじめです。
だってそうでしょ?
1935よりも1940の方が大きいに決まっている!
お母さんだってそう言ったもの。
マリネは小学校入学前の女の子。
働き者でやさしいお母さんと、
俳優を夢見るやんちゃなお兄さんアルシュークと3人で暮らしています。
お父さんは戦争に行ったきり、帰ってきませんでした。
だからマリネもアルシュークも大人顔負けに働かなければならないのです。
普段は仲のよい兄妹ですが、
アルシュークは時々マリネをからかいます。
“おまえはもらわれっ子で、お母さんの本当の子じゃないんだ”
マリネが本気にしてとても心を痛めていることなど気がつかないのです。
雨の日の幸せ
ガチョウのひな
お父さんの形見のコート
なぜだかとても懐かしく、
あたたかな優しい気持ちになる物語たち。
第二次世界大戦が終わって間もない頃のお話です。
わたしにとっては両親の、
もしかするとあなたにとってはおじいちゃんおばあちゃん世代の、
遠い異国のお話ですが、
私と同じで、きっとあなたにも、
どこかしら自分の記憶と重なるものがあることでしょう。
物語の舞台シェニヤル村は、
作者が子どもの頃に暮らしていた
チュヴァシ(現在はロシア連邦チュヴァシ共和国)の村がモデルだそうです。
村人の多くはチュヴァシ語を話すチュヴァシ人ですが、
大きな街にはロシア語を話す人たちが暮らしています。
遠い村には豊かな森に住む大柄なフィン人がいるといった描写も登場し、
ソ連時代の少数民族の暮らしという点でも興味をそそられる物語でした。