かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

2022-01-01から1年間の記事一覧

2022年12月の読書

12月の読書メーター読んだ本の数:21読んだページ数:5448ナイス数:366バーナデットをさがせ!の感想電子メールに手紙、請求書にFBI文書、精神科医との通信に、問合せへの回答書、さまざまな形式の文書で構成されているちょっと変わった物語は、タイトル通…

『バーナデットをさがせ!』

バーナデットをさがせ! 彩流社 Amazon アメリカの人気テレビ脚本家が書き、2019年にケイト・ブランシェットの主演で映画化もされていると聞いて、「トレンディ系の作品ね」と軽い気持ちでページをめくる。「横書きか~。ちょっと読みつけないな」などと思い…

祝★やまねこ翻訳クラブ結成25周年

アリスとふたりのおかしな冒険 (児童書) 作者:ナターシャ・ファラント 徳間書店 Amazon 14歳から考えたい アメリカの奴隷制度 (A Very Short Introduction) 作者:ヘザー・アンドレア・ウィリアムズ すばる舎 Amazon 夜をあるく 作者:マリー・ドルレアン ビー…

『処刑の丘』

処刑の丘 作者:ティモ・サンドベリ 東京創元社 Amazon 銃声がヒルダの夢の中に割り込んできた。彼女ははっと上体を起こし、慌てて息子のベッドを確認するも空だった。不安に胸を締めつけられて、ドアの側面に寄りかかる。イスモは何をしているのか、もう幾晩…

『花びらとその他の不穏な物語』

花びらとその他の不穏な物語 作者:グアダルーペ・ネッテル 現代書館 Amazon 2021年夏の刊行以来、多くの読者を引きつけてやまない 『赤い魚の夫婦』に続く、現代メキシコを代表する女性作家グアダルーペ・ネッテル(Guadalupe Nettel)の邦訳短編集第2弾!「…

『バッサ・モデネーゼの悪魔たち』

バッサ・モデネーゼの悪魔たち 作者:パブロ・トリンチャ 共和国 Amazon 1998年11月のある夜明け頃、ボローニャの少年裁判所が発行した隔離令状をもって、ロレーナとその夫デルフィーノ・コヴェッツィの自宅に警察がやってきた。夫婦の姪であり、ソーシ…

『京都に咲く一輪の薔薇』

京都に咲く一輪の薔薇 作者:ミュリエル バルベリ 早川書房 Amazon 今日マチ子さんの表紙に惹かれて新刊情報に目を留めると、翻訳は永田千奈さんだという。ということは原書はフランス語?とよくよく見れば、世界的なミリオンセラー『優雅なハリネズミ』(L'e…

『麦畑のみはりばん』

麦畑のみはりばん 作者:ベス・フェリー 化学同人 Amazon 翻訳がやまねこ翻訳クラブのよしいかずみさんだというのでチェックしていた絵本です。実際に手に取ってみると、表紙の手触りが、なんだかかかし肌ざわりを思わせるようで、ページをめくる前から、すっ…

『製本屋と詩人』

製本屋と詩人 作者:イジー・ヴォルケル 共和国 Amazon 内容も装丁もそそられることの多い出版社「共和国」が、今度はチェコの詩人の本を出した。しかもそれが現代詩人の作品ではなく、没後100年になる20世紀初頭の革命詩人だと知ったとき、そんな物好き…

『ロリータ』

ロリータ 作者:ウラジーミル ナボコフ 新潮社 Amazon ナボコフの作品はこれまで何作か読んだことがあるが『ロリータ』を読むのはこれが初めて。もちろん『ロリータ』がナボコフの代表作の一つであることは知ってはいたが、これまでどうにも食指が動かなかっ…

『わたしが先生の「ロリータ」だったころ』

わたしが先生の「ロリータ」だったころ 作者:アリソン・ウッド,服部理佳 左右社* Amazon この本のことは、発売前から気になってはいたのだけれどまずはナボコフの『ロリータ』を読んでからだろうという気がしていた。ナボコフの作品はいくつか読んだことがあ…

『《世界》がここを忘れても アフガン女性・ファルザーナの物語』

《世界》がここを忘れても アフガン女性・ファルザーナの物語 作者:清末愛砂 寿郎社 Amazon パキスタンのアフガン難民キャンプで生まれ育ったファルザーナは、5年前に家族とともにアフガニスタンに戻ってきました。2020年、理解ある家族の応援もあり、…

2022年11月の読書

11月の読書メーター読んだ本の数:19読んだページ数:5009ナイス数:486兎の島の感想ああこれは、確かに“怖い”。この“恐ろしい”とは別の怖さではないかという気も。この怖さはおそらく、理解できないことがもたらす怖さ。足元がぐらつき、慌てて伸ばした手が…

『兎の島』

兎の島 作者:エルビラ・ナバロ 国書刊行会 Amazon 正直、怖い話は苦手だが、箱から出すと紫をバックに金色の兎が浮かび上がるこの美しい装丁の前を素通りすることができなかった。“スパニッシュ・ホラー”の短編集だと聞いていたので短い話なら、怖さもさほど…

『わたしのペンは鳥の翼』

わたしのペンは鳥の翼 作者:アフガニスタンの女性作家たち 小学館 Amazon 子どもたちは皆、それぞれの家族とともに国外にいて、彼女は一人で暮らしている。誰かが負傷したり、殺されたりする事件が起きても、犠牲者の中に家族がいるかもしれないと心配する必…

『波が海のさだめなら』

波が海のさだめなら 作者:キム・ヨンス 駿河台出版社 Amazon 「カミラはカミラだからカミラなんだ」どうして私に「カミラ」という名前をつけたのかと問うと、養父エリックは穏やかに笑ってそういった。その名前をつけたのは、亡くなった養母のアンだったが、…

『家の本』

家の本 (エクス・リブリス) 作者:アンドレア・バイヤーニ 白水社 Amazon タブッキやジュンパ・ラヒリが認めるイタリアの偉才。白水社エクス・リブリス、78冊目にして初のイタリア文学。そう聞けば、読まないわけにはいかない!と、心躍らせ手に取った本。 …

『ザ・ナイン ナチスと闘った9人の女たち』

ザ・ナイン ナチスと闘った9人の女たち 作者:グウェン・ストラウス 河出書房新社 Amazon 1943年春、エレーヌはフランス国内軍とイギリスとの連絡役を担う航空作戦局(BOA)でレジスタンス活動をしていた。活動を始めた当時彼女は23歳で、物理学と数…

『エミリ、ときどきマーメイド』

エミリときどきマーメイド 作者:リズ・ケスラー 文響社 Amazon エミリは12歳。ママとふたり、ヨットで暮らしている。中学1年になってはじめて水泳の授業を受けることになってものすごく楽しみにしていた。なぜって、水の中に入るのはこれが初めてだったか…

『自由論』

自由論 (光文社古典新訳文庫) 作者:ミル 光文社 Amazon ミルと聞けば、ベンサムの「功利主義」の流れを汲んだ比較的穏健な功利主義者という、教科書的な位置づけは思い浮かぶものの、実際にどんなことを言った人で、どんなものを書いた人かは知らなかった。…

『ロシアのなかのソ連: さびしい大国、人と暮らしと戦争と』

ロシアのなかのソ連: さびしい大国、人と暮らしと戦争と 作者:馬場朝子 現代書館 Amazon 1951年生まれの著者は、1970年から6年間、ソ連・モスクワ国立大学の文学部に留学した。帰国後は、NHKのディレクターとしてソ連・ロシアのドキュメンタリーを…

『ぼくはソ連生まれ』

ぼくはソ連生まれ (群像社ライブラリー) 作者:ヴァシレ・エルヌ 群像社 Amazon 1971年生まれの著者は、ソ連(現在のモルドバ共和国)で少年時代を過ごし、ルーマニアの大学を卒業後、同地で出版関係の仕事につき、2006年に本書で作家デビューした。 …

『囚われのアマル』

囚われのアマル 作者:アイシャ・サイード さ・え・ら書房 Amazon 舞台はパキスタン。パンジャーブ地方の小さな村の比較的豊かな農家に長女に生まれついたアマルは12歳。家の手伝いをし、妹たちの面倒をみながら学校に通っている。勉強が大好きで、大きくな…

『終わりの始まり』

終わりの始まり (韓国女性文学シリーズ) 作者:ソ・ユミ 書肆侃侃房 Amazon 桜のつぼみがほころびはじめ、やがて見頃を迎え、そして散っていく、そんな短い季節の物語だ。末期癌でもってあと2か月と言われている母の看病をするヨンム。幼い頃、父の死を目の…

『ノーサンガー・アベイ』

ノーサンガー・アベイ 作者:ジェーン オースティン キネマ旬報社 Amazon キャサリン・モーランドを子供時代に見かけたことがある人なら、誰も彼女がヒロインになるために生まれてきた人だなどとは思わなかっただろう。こんな書き出しで始まる物語の原稿は、…

『ペドロの作文』

ペドロの作文 作者:アントニオ スカルメタ アリス館 Amazon 9歳のペドロはサッカー好きの少年。両親から誕生日プレゼントにボールをもらったペドロは、ぶつくさもんくをいった。プロのサッカー選手が蹴るような、白と黒の革のボールが欲しかったのに、もら…

『優等生は探偵に向かない』

優等生は探偵に向かない 自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫) 作者:ホリー・ジャクソン 東京創元社 Amazon 『自由研究には向かない殺人』の続編。 自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫) 作者:ホリー・ジャクソン 東京創元社 Amazon シリーズものの…

『小さなことばたちの辞書』

小さなことばたちの辞書 作者:ピップ・ウィリアムズ 小学館 Amazon オックスフォード、サニーサイド、スクリプトリウム(写字室)。マレー博士を中心に辞典の編纂が行われているその部屋で、エズメは育った。面倒を見てくれる母親がおらず、父親がマレー博士…

2022年10月の読書

10月の読書メーター読んだ本の数:22読んだページ数:5946ナイス数:497ダニー (韓国文学ショートショートきむふなセレクション)の感想なにか事件が起きたらしいのだ。その事件には、育児用に特化されたアンドロイドが関わっているよう。それはアンドロイド…

『ダニー』

ダニー (韓国文学ショートショートきむふなセレクション) 作者:イヒョン, ユン クオン Amazon なにか事件が起きたらしいのだ。その事件には、育児用に特化されたアンドロイドが関わっているよう。このモデルに搭載されたAIのバージョンは4・65で、人間の…