書肆盛林堂《ゾラン・ジヴコヴィチ ファンタスチカ》第2弾!
会いたい、会いたいと思っていた女(ひと)にようやく会えた。
時折こんな風につぶやいてしまうぐらい会いたい女(ひと)だった。
旧ユーゴスラビアのベオグラード出身の作家ゾラン・ジヴコヴィチが生んだこのタマラさんという女性は、かなりの本好きだ。
果物好きでもあって、彼女にとって果物と本は切り離せないものらしい。
原則飲食しながらの読書はしない派の私としては、わざわざ手元に果物を用意して読み始めるタマラさんのその慣習には異を唱えたいところではあるが、その他の点では、何だか妙に共感してしまうところがある。
たとえば、彼女はよく声を出して本を読む。
あるいは、眼科医から本を読むときは眼鏡をかけた方が良いと言われた時のショック。
もしも読んだはずのページの内容が思い出せなくなったなら、その時は……。
といってもこれは、ちょっぴり…いやかなり不思議な、本と果物とタマラさんが詰まったファンタスチカ連作短篇集で、決して本好きあるあるエピソード集ではない。
むしろ、本好きにとっては、恐ろしさのあまり夢でうなされそうな物語だったりするかもしれない。
(あとどれぐらい本を読むことができるだろう)とか、(人生の最後に読む本はどんな本だろう)などと、あれこれと考え込んでしまったりもするけれど、それでも、やっぱり私は彼女に会えたことがとてもうれしい。