かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

2023-01-01から1年間の記事一覧

2023年12月の読書

12月の読書メーター読んだ本の数:4読んだページ数:1060ナイス数:161恋した人は、妹の代わりに死んでくれと言った。5―妹と結婚した片思い相手がなぜ今さら私のもとに?と思ったら―【電子書籍限定書き下ろしSS付き】の感想うわーこれ、どうするの~。イレー…

『吹きさらう風』

吹きさらう風 (創造するラテンアメリカ) 作者:セルバ・アルマダ 松籟社 Amazon 嫌な音は何キロも前からしはじめていた。その前の晩にトスタードの小さな宿に着いたときは、もう聞こえていた。 レニは、出発する前に点検してもらおうと言ったが、牧師は聞く耳…

『十六の言葉』

十六の言葉 作者:ナヴァー・エブラーヒーミー 駒井組 Amazon 誰しも人生で最初に覚える言葉がある。その言葉が見事にわたしを不意打ちにした。ちょうど、ここで取りあげる十六の言葉と同じように。その言葉から身を守ることは、ただの一度も成功したことがな…

2023年11月の読書

11月の読書メーター読んだ本の数:6読んだページ数:1972ナイス数:129悪役令嬢は溺愛ルートに入りました!? 4巻 (デジタル版SQEXノベル)の感想web連載にはない加筆部分が読みたくてセール価格に釣られてまたもやポチってしまったが、後悔はしていない(^^ゞ…

『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』

ようこそ、ヒュナム洞書店へ (集英社文芸単行本) 作者:ファン・ボルム 集英社 Amazon ソウル市内の閑静な住宅街にオープンした「ヒュナム洞書店」。店主のヨンジュは30代の女性で、なにやら“訳あり”であることは、青白い顔をして店に座りこみ、時折涙を流…

2023年10月の読書

10月の読書メーター読んだ本の数:14読んだページ数:3655ナイス数:203百鬼園事件帖の感想内田百間(※作中でも使われている昭和初期当時の表記)不遇の時代を舞台にしつつも、のちの成功を予感させる物語は、怪奇を扱いながらもさわやかな読後感。元ネタを…

『百鬼園事件帖』

百鬼園事件帖 (角川書店単行本) 作者:三上 延 KADOKAWA Amazon 市ヶ谷の私立大学に通うその青年は、神楽坂にある喫茶店「千鳥」に夕食をとりにきた。学生のたまり場になっているその店は、まずいコーヒーと学生たちの腹を満たす安いメニューで知られたカフェ…

『僕のルーマニア語の授業』

僕のルーマニア語の授業 (韓国文学ショートショートきむふなセレクション) 作者:チャン・ウンジン(章恩珍) クオン Amazon すっかりシャッター通りになってしまった古い商店街を歩きながら、聴くとはなしに聴いていた地元のFM放送から懐かしい曲が流れてき…

『見ること』

見ること 作者:ジョゼ・サラマーゴ 河出書房新社 Amazon ポルトガル語圏初のノーベル賞受賞作家ジョゼ・サラマーゴ(1922年~2010年)があの『白の闇』の続編を書いていたと知ったのは、ル=グウィンの『私と言葉たち』を読んだ時だった。サラマーゴを敬愛す…

2023年9月の読書

9月の読書メーター読んだ本の数:12読んだページ数:4585ナイス数:190転生令嬢と数奇な人生を6 恋歌の行方【電子書籍限定 特典イラスト付】の感想web版を読んだにもかかわらず、大人買いして一気読み。不思議テイストが少々くどすぎるきがしないでもないけ…

『あわいに開かれて』

あわいに開かれて 作者:小野 正嗣 毎日新聞出版 Amazon あらゆるものの輪郭がおぼろになっていく、とベス姉がため息まじりにつぶやき罠をしかけているのだ、と長身の老人は言った。言ったように聞こえた。など、おもむろに語りはじめるかと思うと、しばらく…

『夜の潜水艦』

夜の潜水艦 作者:陳 春成 アストラハウス Amazon 1990年生まれ。デビュー短編集『夜晩的潜水艇』で中国版本屋大賞を受賞したという福建省出身の若手作家の作品集。収録作品は、夜の潜水艦/竹峰寺 鍵と碑の物語/彩筆伝承/裁雲記/杜氏/李茵の湖/尺波…

『わたしの心のきらめき』

わたしの心のきらめき (鈴木出版の児童文学 この地球を生きる子どもたち) 作者:シャロン・M・ドレイパー 鈴木出版 Amazon わたしの脳は、数字や地図、できごとや計算を正確に記憶する。それに雑学ならだれにも負けない。たとえば、アラスカやアルゼンチン、…

2023年8月の読書

「夏休み」という名の繁忙期の後も、利き腕の不調のために、引き続きネット休暇をとっているのだけれど、これが意外と心地よく……。 なんだかんだ言っても、ネット疲れが蓄積していたのかもしれないな…などと考える今日この頃。 本を読んでいないわけではない…

『あなたのものじゃないものは、あなたのものじゃない』

あなたのものじゃないものは、あなたのものじゃない 作者:ヘレン・オイェイェミ 河出書房新社 Amazon 1984年、ナイジェリア生まれ。4歳の時に家族とともにロンドンに移住し、10代で作家デビュー。大学卒業後は、ベルリン、ブダペスト、パリ、トロント…

2023年7月の読書

7月の読書メーター読んだ本の数:18読んだページ数:5003ナイス数:298私と言葉たちの感想原題は“Words Are My Matter”(2016)2000年~2016年の間に書かれたエッセイや書評の他、1994年の特別な1週間の日記が収録されている。いつ読んでも、どこから読んで…

『私と言葉たち』

私と言葉たち 作者:アーシュラ・K・ル=グウィン 河出書房新社 Amazon 原題は“Words Are My Matter”(2016)2000年~2016年の間に書かれたエッセイや書評の他、1994年の特別な1週間の日記が収録されている。同じエッセイ集でも先に読んだ 『暇なんかないわ 大…

『アシェンデン―英国秘密情報部員の手記』

アシェンデン―英国秘密情報部員の手記 (ちくま文庫―モーム・コレクション) 作者:サマセット モーム 筑摩書房 Amazon 大戦勃発当時、海外にいた作家アシェンデンが、何とか英国に帰りついたのは、やっと九月初めになってのこと。帰国して早々、情報部にスカウ…

2023年6月の読書

6月の読書メーター読んだ本の数:37読んだページ数:10512ナイス数:548拝啓見知らぬ旦那様、離婚していただきます〈上〉 (メディアワークス文庫)の感想kindle unlimited 商才と武芸に秀でたヒロイン子爵家令嬢バイレッタは、なかなか魅力的だと思うのだが、…

『少女地獄』

少女地獄 (角川文庫) 作者:夢野 久作 KADOKAWA Amazon 収録作品は、表題作の他『童貞』『けむりを吐かぬ煙突』『女坑主』。 なんといっても秀逸なのは、三つの書簡体小説からなる表題作『少女地獄』。とりわけ一つ目の「何んでも無い」の面白さは群を抜いて…

『大正女性文学論』

大正女性文学論 翰林書房 Amazon フェミニズムの視点に立ち、フェミニズム/ジェンダー批評を取り入れて作品を読み直し、発掘をはかり、文学史の書き換えをめざす「新・フェミニズム批評の会」によって編纂された文学論集。これまで“大正時代に見るべき「女…

本がある。

過去を売る男 (エクス・リブリス) 作者:ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ 白水社 Amazon ものすごく好きすぎて、レビューが書けない本がある。 ここから見えるもの 作者:マリアナ・レーキー 東宣出版 Amazon 本棚にしまいこむことがためらわれて、いつま…

『長い物語のためのいくつかの短いお話』

長い物語のためのいくつかの短いお話 作者:ロジェ・グルニエ 白水社 Amazon 2017年98歳でこの世を去ったフランスの小説家、ロジェ・グルニエの生前最後の短編集。その老人は、自らの人生を振り返って自分を罰することを決意し自殺をはかろうとしたのだ…

『書物の宮殿』

書物の宮殿 作者:ロジェ・グルニエ 岩波書店 Amazon たとえば「待つことと永遠」というテーマで書かれたものをみてみよう。ディーノ・ブッツァーティは、スクープを狙って一生を空費してしまう年老いた同僚記者たちの姿を見て『タタール人の砂漠』のアイデア…

2023年5月の読書

5月の読書メーター読んだ本の数:33読んだページ数:6560ナイス数:524結界師の一輪華2 (角川文庫)の感想いろんな事件に巻き込まれる中で、自分の能力を周囲に隠し通せなくなってきた華。双子の姉、朔の弟、二条院家の次期当主候補の双子と、あの人この人の…

『オープン・ウォーター』

オープン・ウォーター 作者:ケイレブ・アズマー・ネルソン 左右社 Amazon サウスイースト・ロンドンの地下にあるハブで、初めてきみと彼女が出会ったとき、きみたちは結ばれるにちがいないと確信した。アイズレー・ブラザースのアップテンポの曲をバックに、…

『評伝 伊藤野枝 ~あらしのように生きて~』

評伝 伊藤野枝 ~あらしのように生きて~ 作者:堀 和恵 郁朋社 Amazon 正直に言えば、つい最近まで伊藤野枝には全く興味が無かった。アナーキスト大杉栄と内縁関係にあり、関東大震災直後に憲兵によって大杉と共に虐殺されたということは聞き知ってはいたが、…

『最後の大杉』

最後の大杉 作者:内田 魯庵 Amazon 大杉とは親友という関係じゃない。が、最後の一と月を同じ番地で暮したのは何かの因縁であろう。こんな書き出しで始まるのは憲兵によって虐殺された大杉栄を偲ぶ、内田魯庵のエッセイ。一時期近所に住んでいたので頻繁に行…

『私信 ——野上彌生様へ』

私信 ——野上彌生様へ 作者:伊藤 野枝 Amazon 本当に暫く手紙を書きませんでした。この間の御親切なお手紙にも私はまだ御返事を上げないでゐました。御病気はいかゞです。私は矢張り落ち付かない日を送つてゐます。こんな書き出しで始まる文章は、野上彌生子…

『乞食の名誉』

大杉栄の「死灰の中から」と伊藤野枝の「転機」「惑ひ」「乞食の名誉」を収録した『乞食の名誉』は1920年に刊行され、1923年9月、二人が大杉の幼い甥と共に憲兵によって虐殺された十数日後に再版、その年の12月までに9版も重ねたのだという。本…