(あら、かもめ通信さん、またまたロシアのお話なの?)と思ったあなた!
実はちがうのです。
この物語を書き上げたのは、イギリスの作家ルース・エインズワースさん。
かべは白くて、やねは赤く、げんかんの右と左に、黄色いバラの植木鉢がおいてある四角いお家「バラやしき」を舞台にしたお話です。
それなら「バラやしき」はどこにあるのかって?
じつをいうと「しあわせの国」にあるのです。
ふつうのひとは、そこをおとずれることはできません。
店で売れなかったおもちゃや、家のなかでどこかにいってしまったおもちゃがいく国だからです。
ここでおもちゃは、みんないっしょに、仲良く楽しくくらしているのです。
黒のえんび服をきたおじいさん、フレデリックはピアノの名人。
髪の毛と目の黒いルルは、フランスの女の人。
いたずら好きの少年ウィリーに、みんなの世話をやくマーサ。
赤毛の女の子ベラ。
個性豊かな人形たちが住むこのやしきに、新しく加わることになったのがロシア人形のバーバなのです。
働き者で面倒見が良く、いつもやさしくなんでも器用にこなすバーバは、すぐにみんなとうちとけるのですが……。
でもなんだかちょっと、へんなのです。
夜中に起き出して、キッチンでつまみ食いをしているのは、本人がいうようにとっても食いしんぼうだからでしょうか?
みんなの留守に、大きさのちがうお揃いの服を山ほど洗濯していたのはどういうわけでしょう?
そうなんです。実はバーバには、みんなが驚く秘密があったのです。
賢明なあなたはもうおわかりでしょう?
このロシアの人形は、マトリョーシカ!
おまけに名前が「バーバ」とくれば、バーバヤーガの流れをくんだ不思議な力も納得です。
この秘密もさることながら、食べたり飲んだり、歌ったり遊んだり、勉強したり喧嘩をしたりといろいろな人形たちの仲の良い暮らしぶりもまた、たのしい一冊。
いろんな違いがあったって、人形たちをみならって、みんなで仲良く暮らしていきたいものですね。