副題は「バルカンの物語」。
収録されているのは、編訳を手がけた八百板洋子さんが、ソフィア大学留学中にご自身であちこち足を運んで集めた民話や、留学中に知り合った友人たちから聞いた物語、あるいは各地で求めた民話集から選んだという、ブルガリア(10)、ルーマニア(2)、スロベニア(2)、クロアチア(2)、セルビア(3)、アルバニア(2)、マケドニア(3)、トルコ(3)、ギリシア(2)、合計29編。
ブルガリアの美しい娘カリンカは吸血鬼に恋をして(「吸血鬼に恋した娘」)、ルーマニアの吸血鬼は人間の娘に恋をする(「青い炎の館」)。
はてさて、それぞれの恋の行方は……。
クロアチアの「おかみさんと悪魔」は、なんとも恐ろしい(!?)お話で、表題作のセルビアの「いちばんたいせつなもの」は……、くー!王さまやられたー!!
同じくセルビアの「いきもののことば」は、これ、なんというオチ!(ムッ!)
マケドニアの“灰かぶり姫”はシンデレラとはひと味ちがう!?(「灰かぶりのマーラ」)
同じくマケドニアの「娘と十二の月」は『森は生きている』の変形だ。
ギリシアの「眠り王」はこれ、いいのかみんなこの結論で!?
という具合に、思わずほっこりしてしまうもの、結論にムッとするもの、クスッと笑えるものに、びっくりするもの、しんみりするもの…と、豊富なバリエーションを兼ね備えた物語集。
スロベニア出身の画家がルディ・スコチルさんが、この本のために描き下ろしたという60点近い美しい挿絵も見応えあり。
現在、品切れ重版未定のようではあるが、長く読み継がれて欲しい1冊だ。