マーガレット・アトウッドが
現代カナダ文学を代表する作家で
日本でも『侍女の物語』をはじめ
人気も評価も高い作家であることは知っていたが
実をいうとこれまで彼女の作品を読んだことがなかった。
この本は、彼女のデビュー作で、本邦初訳の詩集だ。
読んだことがないので、きいただけの知識だが
彼女の作風は、フェミニズム、環境問題等が取り上げられているらしい。
とはいえ、この本に収められた詩からは
明確なメッセージは浮かび上がってこない。
なにかが起こったか
なにかが起こりそうな
不穏な空気に包まれた28篇の詩。
たとえば
「これはわたしの写真」では
しばらく前に撮られたという写真に
小さな木造の家と裏手にある湖らしいことがうたわれたあとこの写真が撮られたのは、次の日です
わたしが溺れ死んだ日の。
と続く。
あるいは「食事」という詩は
わたしたちは清潔な食卓に着き
清らかなお皿から思考を食べている
そんな書き出しで始まるのに
最後の一節はこんなふうだ。
うっかりこぼれた
すこしばかりの愛の屑を
貪り喰って
何だか妙に心がざわついて
詩の向こう側にありそうな物語について
思わず思いをめぐらしてしまう。
そんな詩集だった。