かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『後宮の検屍女官』

 

 第6回角川文庫キャラクター小説大賞とをダブル受賞した“中華風後宮”ミステリー。

発売後、一週間もしないうちに重版決定!と聞いて、こういうのって“何匹目のドジョウ”なのかしら?と思いつつ読んでみることに。

なんといっても私、“中華風”も“後宮”も“ミステリー”も嫌いじゃないのだ。


後宮で1人の妃嬪が亡くなった。
彼女は妊娠7ヶ月で、以前から、妊娠中毒による全身浮腫や激しい動悸が確認されてこともあり病死とされた。
妊娠や出産にともなう死は、めずらしいものではなかったのだ。

ところがしばらくすると後宮内に「死王が生まれた」という、不気味な噂が飛び交うようになる。
先だってなくなった妃嬪の死因は、病死ではなく謀殺で、死者は犯人を怨み,死後に赤子の幽鬼を産み落とした。幽鬼は母の怨みを晴らすため、謀殺の首謀者を探して夜な夜な後宮内を這いずり回っているのだというのだ。

後宮の女官たちは怖がって、夜廻りの警護も人手不足に。
中宮尚書の宦官延明は、皇后の命を受け後宮内の夜警支援に乗り出し、こちらも人手不足解消のために借り出された皇帝の寵妃付きの侍女桃花と運命的な出会いをする。

といってもこれ、ちっともロマンチックな出会いではなく、夜警支援は表向きで実は密命を帯びている計算高い宦官と、出世を望まず三度の飯より寝ることが好きで、いつか城を辞して適当な検屍官たらしこみ検屍の現場で働くことを密かに夢見る女官とが、タッグを組んで、難事件に挑む物語なのだ。

検屍官だった祖父の元で学んだ知識を活かして真相に迫る桃花は、検屍を「冤罪を無くす術」とだという。

その言葉が、かつて冤罪のために宦官に身を落とされた延明にどう作用するのか、謎解きとともにここが読みどころ。

これはなかなかの意欲作。
もしも続きが出たら、きっと手を伸ばしてしまうだろう。