かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

2021年8月の読書

8月の読書メーター
読んだ本の数:20
読んだページ数:4717
ナイス数:670

映画ノベライズ ハニーレモンソーダ (集英社オレンジ文庫)映画ノベライズ ハニーレモンソーダ (集英社オレンジ文庫)感想
#ナツイチ 長篇漫画が原作の映画版ノベライズなので、おそらくいろいろすっ飛ばしそぎ落としているのだろう、あらすじに近いものになっていて、展開や設定に無茶ぶりだろうとおもわれるところもなくはないが、甘酸っぱい青春ラブストーリーではあった。概ね楽しみはしたが、陰湿ないじめのシーンが、恋や友情を結びつける必須アイテムみたいな扱いになっている点は気になった。「いじめ」は格好悪いだけじゃない、それ自体が罪だという意識が希薄な気がして、映画でのそのあたりの描かれ方はどうなっているのかも気になるところ。
読了日:08月31日 著者:後白河安寿,村田真優,吉川菜美
赤い魚の夫婦赤い魚の夫婦感想
現代メキシコを代表する作家の作品をはじめて日本に紹介する短篇集と聞いて、期待値高めで手にした本は、比較的薄い本にもかかわらず、いろんな意味で予想を超える読み応えたっぷりの1冊だった。収録作品は全部で5篇。「魚」「ゴキブリ」「猫」「菌類」「蛇」と、それぞれの物語の中で人間以外の生き物が重要な役割を果たしている。インパクトはゴキブリと戦う「ゴミ箱の中の戦争」が最も強烈だが、いずれの作品も読み終えた後までじわじわくるものがあって忘れがたい。
読了日:08月30日 著者:グアダルーペ・ネッテル
後宮の検屍女官 (角川文庫)後宮の検屍女官 (角川文庫)感想
第6回角川文庫キャラクター小説大賞とをダブル受賞した“中華風後宮”ミステリー。幽鬼の噂で混乱した後宮への夜警支援は表向きで実は密命を帯びている計算高い宦官と、出世を望まず三度の飯より寝ることが好きで、いつか城を辞して適当な検屍官たらしこみ検屍の現場で働くことを密かに夢見る女官とが、タッグを組んで、難事件に挑む物語。これはなかなかの意欲作。もしも続きが出たら、きっと手を伸ばしてしまうだろうな。
読了日:08月28日 著者:小野はるか
ハムレットの母親ハムレットの母親感想
ハイルブランの6冊目の評論集とのことで、1950年代に書かれた表題作「ハムレットの母親」の他に、1972年から1988年代後半、すなわち著者の言葉をひけば「公然たる献身的なフェミニストとしての生活のあいだ」に書かれた20編の論文が収録されている。『ハムレット』を、オルコットの『若草物語』を、メイ・サートンの回想録を、ヴァージニア・ウルフやドロシー・L・セイヤーズの諸作品を読み解くフェミニスト批評はワクワクするほどの面白さ。またまた読みたい本のリストがぐんと伸びてしまった。
読了日:08月26日 著者:キャロリン・G. ハイルブラン
屍の街: 大田洋子 原爆作品集屍の街: 大田洋子 原爆作品集感想
いやもうこれは、買ってよかった。本当に読み応えのある素晴らしい作品集だった。こういう本は、ぜひとも読み継がれて欲しいから、多くの図書館に収蔵してもらいたいところ。
読了日:08月24日 著者:大田洋子
作家の秘められた人生 (集英社文庫)作家の秘められた人生 (集英社文庫)感想
#ナツイチ 読みながら(この作家、どんな作品を書いていたのかしら?)と検索しそうになって、ハッ!と思いとどまる。これフィクションだったじゃないか!(ああそうきたか!)と、分かったつもりになっていたのに、どんでん返し!?(そうだったのか!)と、納得しかけると、またもや、思わぬ方向に舵がとられ、思いっきり翻弄されて、(ええっ!?そっちか!)(今度こそ!?)と、作者の思うつぼにどっぷりはまって、翻弄されまくり……。終わってみれば、なんとこんなところにヒントが!?初めてのギヨーム・ミュッソ、堪能いたしました。
読了日:08月23日 著者:ギヨーム・ミュッソ
骸骨:ジェローム・K・ジェローム幻想奇譚骸骨:ジェローム・K・ジェローム幻想奇譚感想
すごく読みたかった本を書評サイト本が好き!を通じていただいた。ユーモラスな語り口の怪談あり、由緒正しい正統派の怪奇小説あり、奇跡譚あり、恋愛譚あり、SFもあって、妖精譚もある、この1冊でいろんな味が味わえて、一気に読むのはもったいないが、一気に読んでも飽きがこないので、ページをめくる手が止められない!そんな短篇集。とりわけお気に入りはラストを飾る「ブルターニュのマルヴィーナ」!かつて行き過ぎた悪戯が原因で追放された妖精が、現代に蘇り英国にやってくるこのファンタジーがもう素晴らしい!
読了日:08月20日 著者:ジェローム・K・ジェローム
探偵は御簾の中 検非違使と奥様の平安事件簿 (講談社タイガ)探偵は御簾の中 検非違使と奥様の平安事件簿 (講談社タイガ)感想
期間限定一巻丸ごと無料公開で読了。役付の夫に代わって妻が事件を推理する安楽椅子探偵ものかと思っていたのだが、さにあらず。政略結婚したカップルのラブコメディという感じ。まあ夫婦の機微を語るには、二人はまだまだ若すぎるのかも。
読了日:08月18日 著者:汀こるもの
殺人ゲーム (角川文庫)殺人ゲーム (角川文庫)感想
Twitterのプレゼント企画に当選してKADOKAWAさんから戴きました。タイトルから凄惨なシーンも覚悟して読み始めましたが取り越し苦労で、じっくり腰を据えて考えるタイプの心理ゲームを堪能。
読了日:08月18日 著者:レイチェル・アボット
氷柱の声氷柱の声感想
高校二年の時、東日本大震災にあった主人公は、それなりに充実した毎日を送っているが、折ある毎に「震災の影」が…。いいやそうではない。そうではないのだ。主人公も主人公に連なるあの人もこの人も、震災をなかったことにはできないが、それをいうなら程度の差こそあれ、あなたも私も、誰もがあの震災をなかったことになどできないではないか。作家はいわゆる“震災を乗り越え前向きに生きる若者たち”を描いたのではない。ただ率直に自分と、自分と同世代の日常を書いたのだ。そしてそれはしなやかさや温かさが感じられる物語だった。
読了日:08月16日 著者:くどう れいん
曲亭の家曲亭の家感想
当代きっての人気作家曲亭馬琴の嫡男に嫁いだ女性を主人公に、大長編里見八犬伝執筆の舞台裏に迫る物語。独裁的な舅に常に振り回されて、「八犬伝」のことを恨めしくさえ思っていたお路が、人々がなぜ、読物、絵画、詩歌や芝居など、衣食住に全く関わりのないものを、求めるのかを悟るとき、読者もまた、「そうそうそうなの!」とお路と作者に喝采を送ることになるのだが、それでもやっぱり「嫁」の立場としては、お路に深い同情をよせずにはいられなかった。
読了日:08月15日 著者:西條奈加
kaze no tanbun 夕暮れの草の冠kaze no tanbun 夕暮れの草の冠感想
岸本佐知子さんやっぱりいいな、「メロンパン」。滝口悠生さんの「薄荷」はどこか懐かしい感じが好き。でもやっぱりこの短文シリーズでは、一冊目の『特別ではない一日』が一番面白かった気が。読者がすれてしまっただけかもしれないけれど。
読了日:08月14日 著者:西崎 憲,青木 淳悟,円城 塔,大木 芙沙子,小山田 浩子,柿村 将彦,岸本 佐知子,木下 古栗,斎藤 真理子,滝口 悠生,飛 浩隆,蜂本 みさ,早助 よう子,日和 聡子,藤野 可織,松永 美穂,皆川 博子
家宝 (ブラジル現代文学コレクション)家宝 (ブラジル現代文学コレクション)感想
1991年にブラジルで最高の文学賞と言われるジャブチ賞(小説部門)を受賞したというこの作品。130ページほどの比較的短い作品の中に、語りのリズムや表現の美しさが感じられるのは、作家というより詩人として知られている著者の作品を、訳者が丁寧に訳したからに違いない。 真相は?真実は?と考えながら読み進めるうちに、「本物」の意味についてもまた考え始める。 この世に不純物を一切含まない純粋な物などあるのだろうか。幸福とはいったいなんだろうか、と。
読了日:08月14日 著者:ズウミーラ ヒベイロ・タヴァーリス
病むことについて 新装版病むことについて 新装版感想
ウルフのエッセイから訳者が選んだ14篇と短編2篇を収録。なんといってもすばらしいのが、「いかに読書すべきか」と「書評について」。気に入った箇所を書き出そうとすると全文引き写してしまいそうなので、これはもう永久保存版にしようときめる。
読了日:08月12日 著者:ヴァージニア・ウルフ
なんて嫁だ めおと相談屋奮闘記 (集英社文庫)なんて嫁だ めおと相談屋奮闘記 (集英社文庫)感想
「繁盛したことあったっけ?」というツッコミはありつつも、あの「よろず相談屋繁盛記」が「めおと相談屋奮闘記」に看板を掛け替えてセカンドステージに突入した!? #ナツイチ 
読了日:08月10日 著者:野口 卓
ホワイト・フラジリティ 私たちはなぜレイシズムに向き合えないのか?ホワイト・フラジリティ 私たちはなぜレイシズムに向き合えないのか?感想
たとえば「それ偏見だよ」「ずいぶん差別的だね」と、誰かに指摘されたら、おそらく私は躍起になって「そんなことはない」「それは誤解だ」と弁明するだろう。場合によっては、「人権問題には若い頃から積極的に関わろうとしてきた」「私には○○の友だちだっている!」などと口走るかもしれない。でも、違うのだ。私の中には確かに、なんらかの偏見があり、意識的ではないにしろ差別的な発言をしてしまうことだって十分あり得る。そう自覚して、自分の中のあれこれを常にアップデートしていく必要があるのだと改めて肝に銘じる。
読了日:08月09日 著者:ロビン・ディアンジェロ
雀
読了日:08月06日 著者:原 民喜
うたうおばけうたうおばけ感想
“感性”はもちろん、なにより“若さ”がまぶしいが、まぶしくて目をそらしたくなるというよりは、若返りエッセンスをお裾分けしてくれるようなエッセイ集だ。
読了日:08月05日 著者:くどうれいん
夏子の冒険 (角川文庫)夏子の冒険 (角川文庫)感想
あなたもだめ、あなたもだめ、と、瞳の中に情熱の輝きを宿した男がいないことを嘆き、こんなことならいっそのこと一人でいた方がましだと思いつめるナルシスト。夏子こそ、三島由紀夫の分身なのかも!?
読了日:08月03日 著者:三島 由紀夫
子供時代 (ルリユール叢書)子供時代 (ルリユール叢書)感想
“自伝的小説”であるはずのこの作品には、作家自身を思わせる人物と、同じ記憶を共有しているらしいもう一人と、語り手が二人いる。そして二人は常に対話している。一方は記憶をたぐり寄せて「子供時代の思い出」を語ろうとし、もう一方は、その「思い出」の裏に潜む語り手の意識を引き出すかのように、出来事のひとつひとつに再検討をうながす。ああもちろんそうだ。いつだって子供は鋭い観察者だ。
読了日:08月02日 著者:ナタリー サロート

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