かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』

 

心ときめきするもの

庭にやってくる小鳥たち
散歩の途中で出会うリス
青空に映える山並み
いつまでも読み終えたくないような面白い本

実際に傍らにいたなら難がありすぎるようでありながら、
アクの強さが魅力的な男が出てくる物語も面白いが、
女が悩みながらもぐいっと顔を上げて、懸命に歩み続ける本は気持ちが良い。
            (by かもめ通信)




2019年のヨーロッパ文芸フェスティバルに登壇した著者のデビュー作が
清少納言について書いた“Things That Make One’s Heart Beat Faster”(2013年)
だと聞いて以来、ぜひとも読みたいものだと思い、
翻訳されるのを心待ちにしていた。

なんといっても私、
十代の頃からずっと清少納言のファンなのだ。

たとえ彼女の悪口だろうと、話題にされれば読まねばなるまいと思っているのに
ましてやセイ、あなたと私は驚くほど似ている――。と、
清少納言に自分を重ねて語ってしまうフィンランド人が書いた本となれば
これはもう、なんとしても読まなければ!

というわけで、読んでみた。

中年、独身、子どもはいない、ひとり暮らし。
同じ仕事を続けて10年、単調な毎日にあきあきしていて、死にたくなるほどつまらない。
なんとかしなければと考えてはまた悩む、フィンランド人のミアは、
長期休暇制度を使って日本へ旅立つ。
目的は「清少納言を研究する」ため。

研究職にあるわけでもなく、
生け花の免状は持っているが、日本語はわからない。
そんな彼女が一大決心をして、
清少納言についての本を書く」というのだ。
元手はあちこちに申請して得た助成金だから
結果を出さねばとのプレッシャーもかかる。

ヘルシンキから京都、ロンドン、また京都。
東日本大震災の影響を受けていっときプーケットに逃れるもほどなく京都に舞い戻る。
清少納言を追いかけて、清少納言に語りかけながら旅を続ける長編エッセイ。

レディムラサキの影に隠れ、時には混同され、
時には春本扱いされたりと、
清少納言の海外評はさんざんだし、
ミアが読むことができる文献も多くはない。

あちこちたずね歩くも、セイの消息は謎に包まれたまま。

研究は行き詰まり、執筆は進まず、
それでもミアは常にセイに語りかけるのだ。

そんなミアが心の支えにしている本が
ヴァージニア・ウルフの 『自分ひとりの部屋』であるところもいい。

リストマニアにはマニアがわかる。
確かにミアの言うとおり。

でもセイもミアも知っていた?
リストマニアって、いつの時代も世界中至る所に沢山いるのよ。
現にほら、あなたたちの本をうれしそうに読んでいる私もその一人!