かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『予期せぬ瞬間』

 

原題は“Complications: A Surgeon’s Notes on an Imperfect Science”
著者のアトゥール・ガワンデはアメリカの外科医であり、公衆衛生研究者であり、「ニューヨーカー」のライターでもあって、何冊かの本も出している。
数年前、全米でベストセラー、日本でも話題になった 『死すべき定め』の著者だと言った方が、ピンとくる人も多いかもしれない。

原書は2002年に出版されたガワンデのデビュー作で、当時研修医だった著者の目線で書かれた1冊だ。
日本では『コード・ブルー』(医学評論社)というタイトルで2004年に初翻訳されていて、本書は2017年に出版された新版だ。
(新版刊行にあたっては訳の見直しの他、新たに註釈を付け加えるなどされているのだそう。)

医学はimperfect scienceであり、だからこそ日々進歩もしている。
本書の記述の中にも、現在の医療現場からすれば、古くなっているものもあるだろう。

だがしかし、医学がどれだけ進歩しようと、医療従事者にとって、医療現場で現場で起こり得る様々な問題や葛藤にどう向かい合うかという問いは、常にあるものなのだろうと、本書を読んでその厳しさを改めて思う。

医療で人を救うといったヒーロー譚ではなく、医療現場に巣くう闇を告発するといった類いの本でもないが、命に関わる決断を迫られたりと、手に汗握るほどスリリングな場面も多い。

誤診や医療ミスだけでなく、様々な症例やその治療法を紹介しながら、医師の内面に迫るあれこれや、患者にとって最善はなにかという問題を、実例をあげて丁寧に説明する著者の真摯な姿勢に胸を打たれた。