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かもめのつぶやきメモ

『図書館』

『図書館』ゾラン・ジヴコヴィチ著/渦巻栗訳(書肆盛林堂)

はじめてゾラン・ジヴコヴィチに出会ったのは、忘れもしない2011年に東京創元社が刊行した21世紀東欧SF・ファンタスチカ傑作集 『時間はだれも待ってくれない』でのことだった。

ここから『ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語 (Zoran Zivkovic's Impossible Stories)』に手を伸ばし、2015年に 『12人の蒐集家/ティーショップ (海外文学セレクション)』が刊行された時には、きっとこれからは、この作家の作品が続々と翻訳されるに違いないと、期待に胸を躍らせたものだった。

とりわけぜひとも読みたいと思っていたのが、2003年世界幻想文学大賞を受賞している中編小説「The Library」(=本作)だったが、待てど暮らせどなかなか翻訳されず、残念に思っていたところだった。

このたび書肆盛林堂さんから出版された本書は、《ゾラン・ジヴコヴィチ ファンタスチカ》第1弾とのことなので、これから第2弾、第3弾と続いていくはず!
あまりのうれしさに、発売前から予約して待ちわびた。

こんなに期待していると、後でがっかりすることになるのでは…という不安がないわけではなかったが、そこはやっぱり、ゾラン・ジヴコヴィチ!
十二分に期待に応えてくれる中身だった。

収録されているのは6つの物語。

いずれの物語の語り手も本にこだわりを持つ、少々神経質すぎる男たちだ。

ある日届いたメールには、“なんでもあります!”と小さく添え書きがされた「仮想図書館」の文字が。
いつもなら迷わず削除する類いの迷惑メールに違いなかったが、その“なんでもあります”という言葉に引き寄せられて、思わずクリックしてしまう。
自分の名前で検索したのは、決して虚栄心からではない、
なんでもあるというならば、自分の著した3冊の本だって例外ではないはず。
ヒットするはずがないと思う一方で、ヒットしたらしたで問題だ。
なにしろ自分はこうした電子媒体に同意した覚えがないのだから。
ところが、検索結果はというと……。

1つめの「仮想の図書館」でつかみはばっちり。
2つめの「自宅の図書館」では、思わず積読山を顧みる。
3つめの「夜の図書館」に魅入られて、私も夜歩きがしたくなる。
4つめの「地獄の図書館」では、“あなたにはどんな本がふさわしいかな?”と問われるようで恐ろしい。
5つめは「最小の図書館」、これだから古本屋巡りはやめられない!?
ラストを飾るは「高貴な図書館」、神経質にもほどがあると思っていたら、そうきたか!

《ゾラン・ジヴコヴィチ ファンタスチカ》、これはもう集めていくしかない!と、改めて決意を固めた。