かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『山の人魚と虚ろの王』

 

山の人魚と虚ろの王

山の人魚と虚ろの王

  • 作者:山尾悠子
  • 発売日: 2021/02/27
  • メディア: 単行本
 

 あたし、ひとと向き合って食べるのは慣れていないんです
いつもひとりで--食事室は個室で、机は窓に向いていましたから。いつも山を眺めていましたの
そんな言葉を口にしながら少し顔を赤らめる寄宿舎で育ったという年若い女性。
遠縁に当たるその女性と結婚した男の新婚旅行の思い出語りかと思いきや……。

列車は遅れに遅れ、初夜は男女が別々に案内される駅舎ホテルで過ごす羽目に。
そうかと思えばとうにの昔に亡くなったはずの伯母の告別式への参列を余儀なくされて…。

いやいやこの作品に関しては、(たとえそんなことができたとしても)あらすじを紹介することには何の意味もない。

読んで受けた印象について語ろうにも、「例えばここだが…」と再び読み返すと、以前読んだときとは全く違ったものが見えてくる。

美しい夢なのか、それとも悪夢なのかさえもわからずに、ただ物語の中を漂い続ける。
あるいはもしかすると、この本を読んでいるということ自体が夢なのかもしれないなどと頭の片隅で考えながら。