かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

2021年3月の読書

3月の読書メーター
読んだ本の数:16
読んだページ数:4570
ナイス数:555

あるヴァイオリンの旅路: 移民たちのヨーロッパ文化史あるヴァイオリンの旅路: 移民たちのヨーロッパ文化史感想
書評サイト本が好き!を通じてのいただきもの。一挺のヴァイオリンに惚れ込んだ著者はその素性を調べるべく、様々なプロに逢いそのアドバイスを受けながら、フュッセン、ミラノ、ロンドン、ウィーン、ヴェネツィアへと探索を続ける。結果語りあげたのは、楽器作りに適した木材の産地、特定の地域で楽器作りの職人たちが排出されたわけ、そうした職人たちがヨーロッパ各地に散らばった経緯等々、ヴァイオリンという楽器そのものの歴史であり、その背景にうかびあがる、小氷期と呼ばれる気候変動の影響や疫病や戦争などヨーロッパの歴史でもあった。
読了日:03月31日 著者:フィリップ・ブローム
丸い地球のどこかの曲がり角で丸い地球のどこかの曲がり角で感想
気がつけば、足に絡みついた何かに引っ張られ、底なし沼に引きずり込まれてしまいそうな気分になるのに、いっそのこと引きずり込まれてしまった方が、楽になるかもしれないとさえ思ってしまうほどなのに、なぜか後味は悪くなく、前向きな気分にすらなっているなんとも不思議な読み心地。 1篇1篇がこんな短い作品の中で、ここまでにこんがらがった人の気持ちと、複雑な人生そのものを描き出せるものなのかと思うぐらい密度の濃い作品群。
読了日:03月29日 著者:ローレン・グロフ
山の人魚と虚ろの王山の人魚と虚ろの王感想
美しい夢なのか、それとも悪夢なのかさえもわからずに、ただ物語の中を漂い続けた。あるいはもしかすると、この本を読んでいるということ自体が夢なのかもしれないなどと頭の片隅で考えながら。
読了日:03月28日 著者:山尾悠子
セヘルが見なかった夜明けセヘルが見なかった夜明け感想
著者はトルコ東部出身。少数民族にルーツをもつクルド系の作家で、法律家で人権活動家で政治家でもある。解説を合わせても140Pほどの薄い本の中に、冤罪やテロや児童就労など深刻な社会問題が詰まっているが、語り口はおだやかでユーモラスですらある。だからこそ尚更、厳しい現実が特別なことではなく当たり前の日常である事が伝わってくる。それにしても「セヘル」。こんなにも胸が痛く苦しいのは、信じられないような残酷な結末と地続きの現実が世界中の多くの女性たちを取り巻いているからか。被害者でありながら責められるという現実が。
読了日:03月26日 著者:セラハッティン・デミルタシュ
グレゴワールと老書店主 (海外文学セレクション)グレゴワールと老書店主 (海外文学セレクション)感想
老人介護施設で働く青年が、元書店主だったという老人の導きで、本を読む喜びだけではなく、人と人が心を通わせることの素晴らしさを学んで成長していく物語は、「本に魅せられた人々の物語」としては正統派といえるだろう。病気を抱えた老人であったり、学業についていけなかったり、性的マイノリティであったり、移民であったりと様々な社会的弱者が登場し、そうしたもろもろが否定されることなく、あたたかく包み込まれていくという点においても読み心地の良い物語だった。
読了日:03月24日 著者:マルク・ロジェ
もう耳は貸さない (創元推理文庫)もう耳は貸さない (創元推理文庫)感想
バック・ジャッツシリーズ第3弾。身体の自由がきかず、認知症も進んできた89歳の元刑事が、今回も主役をはるときいては読まずにはいられない。かつて彼が手がけた事件をベースに「死刑」をめぐる問題をはじめ、「人権」とは「正義」とは、という問いかけはズシンと心に響く。同時に、バック・ジャッツと彼の家族の人生と、名実ともにバックとともに歩み、彼を支え続けてきた妻ローズの深刻な病のことなど、時にユーモアを交えながらもシリアスに描かれていくあれこれからも目を離すことができず、今回も完全にノックアウトされてしまった。
読了日:03月22日 著者:ダニエル・フリードマン
恥さらし (エクス・リブリス)恥さらし (エクス・リブリス)感想
「あのころのわたしは、滑稽なほど世界を相手に胸を張り、世界を打ち負かして無傷でいられると信じていた」(「ナナおばさん」)そんな若さが痛々しくもまぶしくもあるチリの作家のデビュー短篇集。貧困や格差という社会のひずみ、働く女性の苦難、母と娘の関係など、地球の裏側にもやはり、同じような問題が存在し、同じように閉塞感を抱えて生きている人たちがいるという現実を、読み手につきつけるような物語たちは、それだけに生々しさが強烈で、読み手によって好き嫌いがはっきり分かれそうでもあるが私はこれ読後に残る余韻を含めとても好き。
読了日:03月17日 著者:パウリーナ・フローレス
火の娘たち (岩波文庫)火の娘たち (岩波文庫)感想
1年近くかけて、少しずつ、少しずつ読んできた。なにしろ文庫ながら容易に自立する分厚い本なのだ。おまけに収録作品も小説・戯曲・翻案・詩と多岐にわたっている。一気に読んでしまってはそれぞれの印象が薄まってしまいそうな気もして一つ、また一つと読み進めていった。訳者の野崎歓氏は、ネルヴァルを卒論で扱って以来、四十年近く読み続けて少しも飽きないという。その思いは、巻末に収録された充実した解説はもちろん豊富な訳註にも反映されていて読み応えのある1冊になっている。
読了日:03月15日 著者:ネルヴァル
ひきこもり図書館 部屋から出られない人のための12の物語ひきこもり図書館 部屋から出られない人のための12の物語感想
『絶望図書館』や『絶望書店』でお馴染みの名アンソロジスト頭木弘樹が集めた“ひきこもり”文学集。“ひきこもり”という言葉から連想しがちな暗いイメージではなく、“ひきこもった”ことで向かい合わざるを得なかったあれこれを描いているバラエティ溢れる作品が並んだ、一度ならず二度三度と訪れてみる価値のある図書館にしあがっている。最初に萩尾望都作品を読んだおかげ(?)で、朔太郎もポーもハンガンも脳内モー様バージョンで楽しく読んだ。
読了日:03月12日 著者:萩尾 望都,萩原 朔太郎,フランツ・カフカ,立石 憲利,星 新一,エドガー・アラン・ポー,梶尾 真治,宇野 浩二,ハン・ガン,ロバート・シェクリイ,上田 秋成
小僧の神様・城の崎にて (新潮文庫)小僧の神様・城の崎にて (新潮文庫)感想
先日読んだ「月の家の人びと」の舞台が、かつて志賀直哉が住んでいた山科の家だったことからの派生読書。志賀が山科をどういう風に描いていたかを確認したくて手に取った。細い土橋、硝子戸、池庭のある一軒家。志賀は、大正十二年十月から同十四年四月までの約二年間山科に住んでいた。家のイメージを膨らますのには役に立ちはしたが、かの地での体験をもとに書かれた「山科の記憶」は「瑣事」「痴情」「晩秋」との連作で、作家が自分の半分の歳頃の若い女性と浮気をする男のエゴ満載の作品だった。
読了日:03月10日 著者:志賀 直哉
月の家の人びと月の家の人びと感想
(山科ってどこ?)というぐらい土地勘がなく、まったく知らない人たちの物語が、どうしてこんなに郷愁を誘うのでしょうか。そしてあの、時折、庭に現れる不思議な人たちはいったい……。この本をきっかけに、久々に志賀直哉を再読しました。この本を読んでいたら、ふと懐かしくなって、本棚から朽木祥さんの『引き出しの中の家』をひっぱりだしました。そしてこの本を読み終えた後も、作中に登場し、巻末にも収録されているクリスティーナ・ロセッティの『望み』という詩の一節が、頭の中で繰り返し朗読されています。
読了日:03月08日 著者:砂岸 あろ
ポーの一族 秘密の花園 (1) (フラワーコミックススペシャル)ポーの一族 秘密の花園 (1) (フラワーコミックススペシャル)
読了日:03月06日 著者:萩尾 望都
人之彼岸 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5051)人之彼岸 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5051)感想
郝景芳の第二短篇集の全訳。AIをめぐるエッセイ2篇と、短篇6篇が収録されている。エッセイはかなり難解だが、意外にも短篇の方は読みやすい。元々AIものはもちろんSF自体にも疎いので、収録作品が目新しいとか、○×に似ているとかいった評価は下せないが、いずれもAIをテーマにしていながらも人情味溢れる作品群で読みやすかった。お気に入りは、どんな病人でも嘘のように回復させてしまうという病院の謎に迫る「不死医院」。人工知能業界のエジソンといわれる人物に意識不明の重症を負わせた事件の真相にせまる「愛の問題」も○。
読了日:03月05日 著者:郝 景芳
失われた時を求めて 5 第三篇「ゲルマントのほうI」 (古典新訳文庫)失われた時を求めて 5 第三篇「ゲルマントのほうI」 (古典新訳文庫)感想
この巻のいちばんのお気に入りは、サン・ルーの所属する隊で行われているいう戦史講義の「美しい証明」をめぐるあれこれ。(p250~)
読了日:03月03日 著者:プルースト
途上途上
読了日:03月01日 著者:谷崎 潤一郎
シロクマといっしょにお引っ越し!?シロクマといっしょにお引っ越し!?感想
いつだって苦悩を抱えた子どもたちの元へと旅するシロクマ、ミスターP。シリーズ第三弾の本作では、北国に。 シロクマの本領(?)発揮の雪の中での活躍ぶりとともに訳者苦心(?)のダジャレの嵐にも注目だ!
読了日:03月01日 著者:マリア ファラー

読書メーター