なんといってもこの装丁!
こんな瞳で見上げられたら、思わず手を伸ばしたくなるというものだ。
ところが、ふさふさした毛並みの猫に会いにいく気満々でページをめくると
いきなり登場するのは一歳半になるポインター犬のジャック
で、
お手伝いさんと一緒に市場に出かけたはいいが、
はぐれてしまったあげく、なんと誘拐されてしまうのだ。
(「犬の幸せ」)
続いて登場する僕
は、
サプサン三十六世と名乗るでかくて強くて、赤茶色した珍しい種類
の猟犬だ。
(「僕はサプサン」)
三作目の主役はがっちりとした体格の外飼いの犬バルボスと
繊細で臆病なほどお行儀の良い室内犬ジュリカの二匹。
少々意外な結末に胸が痛む。
(「バルボスとジュリカ」)
四作目でようやく登場する猫のユーユーは
作家の愛猫がモデルだと言うだけあって
(ああ猫ってそうだよね!)という描写がいっぱい!
(「猫のユーユー」)
他にも子ゾウが生きる気力を失って病に伏す女の子を見舞う話や
あのアントン・グリゴリエヴィチ・ルビンシテインの目に留まった
貧しいピアノ弾きの少年の話、
優しく賢いがとてもみにくい王女さまの話など
十三作品を収録した短篇集。
トルストイやゴーリキーから高く評価され、
ロシア文学史上最も広く読まれた作家のひとりであるとされるクプリーンの
いまもロシアで読み継がれ子どもたちに愛されているという作品たち。
優しい気持ちに包まれて、心穏やかになれること請け合いで、
就寝前のひとときの読書にもお薦めだ。