かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『うっかりものの まほうつかい』

 

むかし、あるところに、イワン・イワーノヴィッチ・シードロフという学者がいました。
機械づくりの名人で、魔法使いでもありました。

掃除をする機械、蠅を追い払う機械、珈琲を入れてくれる機械などなど、イワンはさまざまな機械を発明してきましたが、なかでも一番のおきにいりは、イヌ型ロボットの“ロボくん”でした。

大きさは猫ぐらいで、犬のようにいつも後からついてきて、人間のようにおしゃべりができる機械です。

働き者のロボくんは、朝になるとイワンを起こします。
電話にも出るし、接客もお手のもの、ご飯の支度もするし、イワンの身支度を点検し、スケジュール管理までやってのけるのです。

ある日、イワンはロボくんをつれて森に散歩にでかけました。
すると、向こうから、小麦を乗せた荷馬車に乗った男の子がやってきました。
男の子はロボくんをみつけてびっくり!
そして「どんなことでもできるなら、ぼくの馬をネコに変えられますか?」とイワンにたずねたのでした。
運悪く丁度その時、ロボくんはリスを追いかけて森の中に走って行ってしまい、イワンに忠告することができなかったのです。

なにをって?
もちろん「動物を大きくする魔法のレンズ」が修理中だってことをです!

というわけで、イワンが「動物を小さくする魔法のレンズ」を取り出して馬のほうに向けると、馬がたちまちネコに変身!?
馬についていた馬具まで小さくなってネコにぴったりになったまではよかったのですが、元に戻すことが出来なくなって……。
さあ大変!!


福音館書店の世界傑作絵本シリーズ・ロシアの絵本。

作者のエヴゲーニイ・シュワルツは、1896年、ロシア連邦タタールスタン共和国(現)の首都カザンで生まれです。

オリガ・ヤクトーヴィチは、ロシアのウラル地方のニジニー・タギル市で生まれ、子ども時代を過ごし、モスクワの大学を卒業してから、ウクライナキエフに移住した経歴を持つ、日本でも 『かものむすめ』 『はちみついろのうま』などの絵本で親しまれている絵本作家です。

この「イワン・イワーノヴィチのまほう」(原題「Рассеяный волшебник」“うっかりまほうつかい”)は、1945年に発表されて以来、多くの子どもたちに親しまれている作品だとのこと。
おそらくは、ソ連の子どもたちにも、ロシアの子どもたちにも、ウクライナの子どもたちにも、楽しく読みつがれてきたということなのでしょう。

絵本に添えられたさりげない説明に、いつの時代にあっても、国や地域、使う言葉が違っても、多くの子どもたちが同じ物語に耳を傾け胸躍らせる、そんな社会であって欲しいという思いを強くしました。
同時にそういう社会を作るのはやはり、大人の責任だとも思うのです。