かもめもかも

かもめのつぶやきメモ

『永遠のファシズム』

 

ウンベルト・エーコの政治的・社会的発言集。
湾岸戦争、ネオナチの台頭、難民問題など、執筆当時の時事問題を取り上げつつ、ファシズムの危険性を説き、メディアのかかえる問題を指摘し、知識人の有り様などを取り上げた、論文や講演録が5篇収録されている。

1991年湾岸戦争のさなか「リヴィスタ・ディ・ルーブル」誌に掲載された「戦争を考える」
クライゼヴィッツフーコーモラヴィアカルヴィーノを引き合いに出して、イタリア知識人層の受け止めについて展開する。

1995年4月にニューヨークのコロンビア大学で、学生・教職員を前に行った講演原稿を元に推敲された「永遠のファシズム
「原ファシズム(Ur-Fascismo)」を見極める14の典型的特徴をあげて、原ファシズムは、私たちのまわりに、今も何げない装いでいるものだと説く。
この「原ファシズムの定義」は、 これ以降に出版された多くの書物にも引用されるなど、社会に与えた影響も大きい。
(かくいう私も、実のところ、他の本を読んでいたらこの「原ファシズム」に行き当たり、そういえば読んでいないな…とこの本を、家族の本棚から借り出してきたのだった。)

「新聞について」は、1995年、イタリア上院主催の連続セミナーの一環として。上院議員と主要新聞の編集長を前に発表した報告だというのだが……。
一読者である私でさえ、耳が痛いことばかりなのに、議員も新聞社の面々も、よく平気な顔をして聞いていられたものだ……というか、途中で怒り出したりはしないのか?やっぱりエーコだから?

「他人が登場するとき」は1996年マルティー大司教への書簡で、「移住・寛容そして堪えがたいもの」は、1997年に行われた学会の報告に、同年の別のフォーラムでの講演録と新聞掲載論文を合わせてまとめたもの。


手にとっては見たものの、数ページめくって、やっぱりエーコは小難しくて、とても読み切れそうにないとあきらめかけた。
ところがふと思いついて声に出して読んでみると、これが意外といける。
腑に落ちないところもそれなりに、ここはきっと笑いを取りにきているなというところも、だんだんわかるようになり、リズムをつかめば、あとは黙読でも読み進めることができた。